出版社内容情報
西條奈加[サイジヨウナカ]
著・文・その他
内容説明
なぜ、侍は、首だけになってしまったのか?なぜ、少年は、ひとりぼっちになってしまったのか?なぜ、二人には記憶が無いのか?ともに諸国を巡るうち、明らかになる哀しい事実。直木賞作家が描く愛おしくも切ない恐ろしくも哀しい人の心。
著者等紹介
西條奈加[サイジョウナカ]
1964年、北海道生まれ。2005年『金春屋ゴメス』で第17回日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。’12年『涅槃の雪』で第18回中山義秀文学賞を受賞。’15年『まるまるの毬』で第36回吉川英治文学新人賞を受賞。’21年『心淋し川』で第164回直木三十五賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
旅するランナー
253
にぎり飯盗みがループする少年と、生首だけになった武士による道連れ旅。なんじゃそりゃ? ちょっと苦手な和風ファンタジーだと思って読んでいると、その独創的で意表を突く展開に、ページをめくる手が止まらなくなる。さすが直木賞作家だけのことはある、西條奈加さんのその筆力! 小林系さんによる登場人物たちを描いた挿画が、これまた素晴らしく、読む手助けをしてくれます。2022/12/29
いつでも母さん
191
過去の記憶が無い一人は悪ガキ。同じく記憶の無いもう一人は首から下が無い男。西條さんの新作は時代ファンタジー。二人の出会いから、過去の記憶を探す道連れとなるのだが・・なんだろう二人の『縁』が明るい事を示唆しないから切ない気持の連作7話。「正義とて、ふりかざせば刀と同じ。容易く相手を傷つけ、命すら奪う」二人の行き着く国は・・そして、その先は・・西條さんだから安心して読んだ。2022/10/01
ちょろこ
159
せつない物語の一冊。記憶を失くした少年トサと生首オビトの出会いから、徐々にせつなさが浮き彫りになっていく物語。七つの国を順繰りに旅していく過程はシュールで時に微笑ましく、時に優しさも漂う好きな世界観。行く先々での人との出会いを機に記憶が微かに彼らの頭をよぎるシーンにざわざわし、二人のその記憶は果たして混じり合うものなのか目が離せなかった。波賀理の国は圧巻。奥が深い。世の中たるもの、人、立場で変わる善悪、正義についての言葉が絶え間なく心揺さぶり、せつなさもぽつん。二人が歩む道に常に優しい光がさしますように。2022/10/26
モルク
144
ぐるぐると同じ道、何度も同じ出来事を繰り返す国で少年トサと首だけしかない武士(が、喋る)オビトは出会う。過去の記憶を失っているふたりが旅をし数々の不思議な国に迷いこむ。ファンタジー要素もあるが、善と悪の解釈も考えさせられてその深い世界に引き込まれた。このふたりの因縁にあんぐりとなり、これは思い出さなかった方がよかったのか、それとも…。喋る生首と旅をするのは由原かのんさんの「首ざむらい」に似ているが、似て非なるもの。とてもよかった。2023/09/27
のぶ
139
西條さんの本をすべて読んでいるわけではないが、こんな時代ファンタジーは初めて読んだ。この本にはオビトという昔侍だったらしい男と、トサという子どもが全編を通して登場する。冒頭で空腹に耐えかねて、目の前にいる男の握り飯を奪う行為を繰り返すトサとオビトが出会う。この二人はなぜか記憶を無くしていた。このコンビが過去を取り戻すべく冒険の旅に出る。その七つの旅の話が描かれているが、各地に寄るごとにいろいろな出会いのうちに悲しい事実が明らかになってくる。あまりに奇抜な設定で個人的にはちょっと合わなかったかな。2022/09/23