出版社内容情報
戦国時代の備前の国で宇喜多直家は権謀術策を縦横無尽に駆使し、成り上がっていった。腐臭漂う、傑作ピカレスク歴史小説見参!
木下 昌輝[キノシタ マサキ]
内容説明
娘の嫁ぎ先を攻め滅ぼすことも厭わず、権謀術数を駆使して戦国時代を駆け抜けた戦国大名・宇喜多直家。裏切りと策謀にまみれた男の真実の姿とは一体…。ピカレスク歴史小説の新旗手ここに誕生!!第92回オール讀物新人賞をはじめ、高校生直木賞など五冠を達成した衝撃のデビュー作。特別収録・高校生直木賞ルポ。
著者等紹介
木下昌輝[キノシタマサキ]
1974年奈良県生まれ。近畿大学理工学部建築学科卒業。ハウスメーカーに勤務後、フリーライターとして関西を中心に活動。2012年「宇喜多の捨て嫁」で第92回オール讀物新人賞を受賞し、14年『宇喜多の捨て嫁』で単行本デビュー。同作は直木賞候補となり、15年高校生直木賞、歴史時代作家クラブ賞新人賞、舟橋聖一文学賞を受賞。同年咲くやこの花賞も受賞した。2作目の『人魚ノ肉』は山田風太郎賞の候補、3作目『天下一の軽口男』が吉川英治文学新人賞候補(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
269
6月の第一作は、『宇喜多の捨て嫁』です。以前から読みたかったんですが、未読の状態でした。今回文庫化されたので、読みました。木下昌輝、二作目です。全編に腐臭と錆びた血の匂いが漂う血塗られた連作短編集、独特の世界観で、デビュー作で直木賞ノミネート、高校生直木賞受賞も納得です。高校生直木賞実行委員会のメンバーは大人びているんでしょうネ。普通の高校生だったら『サラバ!』を選んでいる(実際は7対5と僅差)ような気がします。宇喜多直家は戦国時代のゾンビだったのかも知れません。2017/06/02
しんごろ
207
中国地方の三大謀将と言われ、悪人のイメージもある宇喜多直家の物語。読み進めていくうちに宇喜多直家のイメージが変わる。乱世の中で、ものすごい人間ドラマを見たような気がする。宇喜多三老を筆頭に家臣達が、このような男に最後までついていったのかわかる気がする。その一方で嫁、娘達がなんともかわいそうで…。波瀾万丈に加えて、切なさも、感じる物語でもあった。ただ個人的には、時系列がしっかりと追ってくれてていれば、もっと面白く読めたかなと思ってます。2020/03/10
岡本
206
乱世の梟雄・宇喜多直家の印象をガラッと変える一冊に出会えた。多くの作品では無慈悲で冷酷な野心家と書かれる事の多い直家を複数の視点から描いている。読み進めると其々の思惑があり、直家の所業も異なった意味を持ってくる。著者の他の作品も読んでみたくなった。2018/09/14
ナルピーチ
157
“宇喜多直家”の生涯を様々な人物の視点から描いた連作短編集。この小説を読む以前と読み終わったあとでは直家に対する印象が大きく違う。戦国時代の“梟雄”として知られる直家。その異名通り、本書の中でも生々しく残虐極まりない描写が多く描かれている。でもそれは戦国時代を生き抜く為の術。そうやって決して大きくはない氏族から備前一国の支配者にまで上り詰めていく。本書では今まで直家に抱いていたイメージを壊し、新たな人物像を知る切っ掛けにもなってくれた。こういう視点から時代小説を描ける木下先生の作品、今後も読んでいきたい。2023/06/21
ケイ
152
宇喜多直家。当時の時代物を読めば必ず出てくるが主役級でなく、今ひとつ良くつかめない男。美談や武勇が秀でてあるわけでもなし。なんとなく食えない男だというイメージばかり。そんな男とその娘たちに焦点を当てた短編6つ。時系列がバラバラなのが、かえって楽しかった。こんなだったのかもしれないと思わせてくれた。魅力的な登場人物2人~島村観阿弥と継父中山備中がキーパーソンとして登場する時は大変に魅力があるのに、彼らにさらに焦点が当たった時の人間臭さに触れると魅力が減じた。同様に宇喜多直家についても知らぬままが良いのかも。2020/03/13