出版社内容情報
唐・玄宗皇帝の時代。絶対的権力者に抗おうとする若者と、人に人らしからぬ生き方を強いる体制を糺そうとする若僧の、心熱き戦い。
内容説明
唐・玄宗皇帝の時代。皇帝は政治を疎かにし、宮廷では佞臣が暗躍していた。身体を欠損し失意のうちに従軍した崔子龍は、権勢を振るう宦官・辺令誠の非道に憤り、天童と謳われた真智は、義父の遺志を継いで皇帝を糺そうとしていた。そこへ、安禄山挙兵の報が届く。彼らの闘いは、この国をどこへ導くのか―。胸を熱くする圧巻の中国歴史長編。
著者等紹介
千葉ともこ[チバトモコ]
1979年、茨城県生まれ。筑波大学日本語・日本文化学類卒業。2020年、『震雷の人』で第27回松本清張賞を受賞しデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ぼっちゃん
48
唐・玄宋皇帝時代に世を変えようと戦う3人の若者の物語。楊貴妃のいる時代だが、楊貴妃が皇帝に気に入られているのをいいことに楊一族が好き勝手いていたとは、どの時代もうまく取り入って甘い汁を吸おうとするやつはいるんだな。【図書館】2023/07/16
ぽてち
37
デビュー作の『震雷の人』で松本清張賞を受賞した千葉ともこさんの新作は、玄宗皇帝時代の唐を舞台にした英雄譚だ。名家の嫡男・崔子龍と幼馴染みの王勇傑、杜夏娘の3人に加え、“天童”と呼ばれる若僧・真智の運命が複雑に絡み合う。玄宗は楊貴妃にうつつを抜かし、権力を握った辺令誠や楊国忠に唐は好きにされている。そんな折、安禄山が挙兵し唐は窮地に陥る。崔子龍はその名前から三国志の趙雲を連想させ、そんな描写もあるが、むしろ劉備のように優柔不断で苛々する。真智は切れ者だが武力はない。裏切りや絶望の果てに彼らを待つものは……。2022/06/10
よっち
30
皇帝は政治を疎かにし、宮廷では佞臣が暗躍する唐・玄宗皇帝の時代。そんな中でも天に臆せず、どこまでも義に生きることを貫こうとする者たちの物語。身体を欠損し失意のうちに従軍して、権勢を振るう宦官・辺令誠の非道に憤った崔子龍、天童と謳われ義父の遺志を継いで皇帝を糺そうとする真智。幼馴染3人の何とも複雑な関係を絡めながら描かれる展開は、当時の英雄ですら屈服させてしまう佞臣の昏い影響力の凄まじさに戦慄しますが、安禄山挙兵の混乱が続く中で、今自分の成すべきことは何かを問い続ける彼らの苦悩と生き様が印象的な物語でした。2022/06/15
のぶりん
22
血なまぐさい恐怖が押し寄せてくる。確かに大好きだった三国志の戦闘シーンは悲惨だが、千葉氏の文章はそれ以上に目を背けたくなる悪行非道が描かれ途中でギブしようかと思った。読み終えて疲れた。果たして英知や自尊心はこんなにもろい物だろうか。圧倒的な筆力とスピード感ある展開で引きつけられたが市井に暮らす民の一人としては後味がよくないなあ。2022/07/05
サケ太
16
これはかなり面白かった。安禄山の乱に関わる人々。その前夜で発生する因縁。それぞれの人物の信念が衝突し、物語を終幕に導いていく。視点を担う人物たちが魅力的に描かれており、その運命を最後まで見守りたくなった。2024/03/30