内容説明
あらゆるものを螺旋として捉え、それを集め求める螺旋蒐集家は、新宿のとあるビルに、現実には存在しない螺旋階段を幻視した。肺を病む岩手の詩人は、北上高地の斜面に、彼にしか見えない巨大なオウム貝の幻を見た。それぞれの螺旋にひきこまれたふたりは、混沌の中でおのれの修羅と対峙する…ベストセラー作家、夢枕獏が仏教の宇宙観をもとに進化と宇宙の謎を解き明かした空前絶後の物語。第10回日本SF大賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
69
熱帯ジャングルでゲリラに撃たれる子どもを助けもせずにその光景を写真に撮り、その後自分も襲われたカメラマンは、帰国後、螺旋蒐集家となった。幻の螺旋階段が見えるカメラマンと、北上高地の斜面に巨大なアンモナイトの幻を見た岩手の詩人は、一体となって、スメールで高みを目指す。「上弦の月を喰べる獅子」という題の絵に感銘を受け触発されて書いたという宗教に基づく広大な宇宙の話。まだ、全容が見えてこない。2019/11/16
白義
12
仏教問答、というより密教的な官能性と宇宙全体をひっくるめた進化論をドッキングした思想をそのまま著者一流の冒険小説の枠組みでグイグイ展開するというなんともパワフルな小説。螺旋収集家と宮沢賢治という一風変わった組み合わせの主人公が一つに邂逅し、異世界冒険物になってからはとにかく壮大なのに凄く読みやすい。高温多湿で原色的な世界と伝奇小説風の妖しさが融合した世界に、宇宙や人の存在意義を問うていく思想要素が、理屈ではなく過剰なまでにグロテスクで豊穣なイメージで展開されていくのが凄い。伝奇小説の流れをくむSFの大傑作2019/11/04
hiloaki
9
悪くはないけど、このテの話を好んで読むほど暇ではない。というか、生活の中で読書のプライオリティの低い自分にはこういうのを面白いと思えない。そんな感じの内容でした。下巻に期待したいが、どうでしょう? 好きな伊坂幸太郎のおすすめ本でしたが、やはり作家は読書好きですからねえ。2017/06/21
南註亭
5
数度目の再読になります。単行本の出版が1989年、その年の日本の全ての文学賞と仏教・宗教系の文化賞は、この作品だけに与えられても良かったのではないか。少し手を加えられた文庫版が出版されたのは1995年。その年の日本の全ての文学賞と仏教・宗教系の文化賞も、再びこの作品だけに与えられても良かったのではないか。そう思える作品です。2012/04/29
90ac
4
タイトルが興味深い。調べてみたら“ミティーラ美術館”にある作品のタイトルということだ。そして遺伝子について書くための構成を決めてから作品を作ったということだ。複雑な目次のタイトルの意味が初めて分かった。DNAの耕造を作ってますね。その二重螺旋構造を物語りに当てはめるために“螺旋蒐集家”と“宮沢賢治”を合体させているのか?。因果の因と果を二重に捩じ合わせていく。なかなか面白い構想の作品に仕上がっている。読み始めは、物語の耕造がなかなか見えてこない。一旦ペースに乗ってしまうと一気に読める。2012/06/01