内容説明
さあ、お聞きなさい、グリマー姉妹のおとぎ話を。美しいけれど邪悪な王女や可憐な姫君をまどわす魔物の王子、闇の公子に恋した乙女や狼に変身する美少女たちがくりひろげる、美しく妖しく残酷な九つの物話を…。ダーク・ファンタジィ界の女王がグリム兄弟ならぬグリマー姉妹の名を借りて、「白雪姫」「シンデレラ」「美女と野獣」「ハーメルンの笛吹き」などおなじみの童話をモチーフに織りあげた、魅惑の幻想童話集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アナーキー靴下
85
『白馬の王子』は軽快でとても良かったけれど、ダーク・ファンタジーの女王としてのタニス・リーも気になり、おなじみの童話をモチーフに織り上げたという本書を読んでみた。耽美で絢爛、という予備知識から、装飾的な表現が多いものと想像していたが、全然違った。無意味に美麗さを書き連ねているのではなく、フォーカスされ描き出されていく一つ一つが美しいのだ。このまま息を止めたままでいられたら永遠に留めておけるのに、そんな瞬間がコマ送りのように、それも滑らかに繋がってゆく。美とは刹那、単調なハッピーエンドなど無縁の童話集だ。2022/07/14
あたびー
38
誰もが知っている有名なメルヒェンをタニス・リー流のダークトーンに染めた作品集。ハーメルンの笛吹き、白雪姫、眠り姫、シンデレラ、ラプンツェル、カエルの王子、赤ずきん、白鳥の湖、そして美女と野獣。D社のアニメ映画に取り上げられている作品もあるけれど、あの能天気さはここには微塵もない。白雪姫の疎ましい7人の小人、強力な復讐の魔女と化したシンデレラ、謎めき黒い魅力溢れる赤ずきんのおばあ様といったキャラクターに惹き付けられた。2023/11/06
ニミッツクラス
26
97年（平成9年）の税抜700円の文庫FT初版。原題にある“グリマー姉妹”と言う、グリム兄弟のネガ像のような面白げな文言を、邦題では“幻想童話集”で片付けた。童話などをモチーフにした紀元前から未来までのダークファンタシー9編。シン・グリムで括りたくなる着想の変換と言うか…解説の“負の聖性”が言い得て妙だろう。収録作「血のごとく赤く」と「墨のごとく黒く」は共に原題直訳でまるで一対のようだが内容はそうでもない。お気に入りは巻尾の「緑の薔薇」。SFのFC物に叙事抒情性を持たせるとこうなるのか…脱帽。★★★★☆☆2023/11/10
歩月るな
16
「舌の焼けるような紅茶をひと息に飲み干したので、喉と胃がひりひりする。もうすぐ豚になってブーブー鳴きだすのでは？」闇の女王による童話のパスティーシュ、単なる語り直しではなく、まさに妖しい輝きを帯びて迫りくる。解説に倣い、ラプンツェルだけは原作の方が大変、と言えばそのとんでもなさが伝わるのだろうか。『緑の薔薇』なんかは美女と野獣を底にしていながらコズミックファンタジーな形容しがたい雰囲気が『沙耶の唄』なんかを思い起こさせてそっち方面に通じる文脈を感じる。原作を意識しなくても良いほどの語り直し、紅茶の如く。2019/03/17
星落秋風五丈原
15
十字架と洗礼を怖がりある年齢に達したら国民は呪われた病にかかるってそりゃあもちろん白雪姫の正体はアレでしょう！でも彼女を助けるのが聖痕のある人ってどうなの？赤ずきんもタニス・リーにかかれば狼に一番最初に食べられてしまう可哀想なおばあさんがこの通り！赤ずきんの正体についてはワンス・アポン・ア・タイムや映画版でも使われているけれど最初に発想したのは一体誰?2014/09/26
