感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あ げ こ
11
冷たく、厳しく。無慈悲であり、過酷である冬。緩みなく、滞りなく、張り詰め、澄み渡る冬の。美しさこそが。物語を高める。鋭く、鮮やかに。物語を際立たせる。恐怖も。静寂も。孤独も。決意も。躊躇いも。思慕も。哀れみも。不意に満ちる闇の、その濃さも。追い、追われ続ける宿命の、その逃れ難さも。立ち上がり、抗い。小さく、非力に、けれど諦めず、一つずつ乗り越えて行く様も。考え、向き合い。最後まで勇敢であり続けた彼等に相応しい、温かな結末も。何もかもを覆い尽くそうと迫る冬の、残酷さによって。際立つ。鮮明に、鋭利に。深まる。2016/12/30
sakadonohito
9
中編2つはいった作品。どちらも文体雰囲気が良い。1.冬物語は内容的にはnot for meだった。2.アヴィリスの妖杯はまぁまぁ好みだった。どちらの作品も理不尽に襲われるストーリー。2022/04/19
ゆぽんぬ
4
雲の向こう側には一筋の銀色の糸があり、それがだんだんとぬくもり、ひろがっていった。と、開いた目に、風に吹かれた広大なオパール色の空がとびこんできた。現実の空だ。夢ではなかった。この世のあけぼののバラ色がかった黄金の輝きが柔らかくさしそめていた。2021/11/15
mabel
4
再読。冬物語、やっぱり好き。なんだろう、本当に描写が美しくて、色彩や風景が浮かび上がってくるよう。海辺の神殿、現れた旅人、失われた聖遺物、オアイーヴの心が向かう先。 解説ではゲド2巻目「こわれた腕輪」のアルハとの類似が指摘されてるけど、うーん、なんか違う気がする。わたしはイルスの竪琴2巻目「海と炎の娘」のレーデルルを思い出す。「冬物語」なのにいつもなぜか夏に読み返したくなるのは、物語の…のせいかもしれない。2017/09/20
mabel
4
タニス・リーの初期の作品。随分前に読んだんだけど、主人公の名前オアイーヴOaive と聖遺物の骨のことがなんだかずっと忘れられなくて、再読。灰色と白と黒の冬物語の最後、鮮やかな夏の色合いが、なんともいえず素晴らしいです。今や絶版なのかな。いいお話はずっと心の種になって残るのに。もったいない。2014/08/31