内容説明
自然と本能のまえにとまどう異星生物のライフサイクルを、斬新なスタイルで描き、1973年度ネビュラ賞に輝く表題作ほか、コンピュータによって他人の肉体とつながれた女の悲劇を通して、熾烈な未来社会をかいま見せ、1974年度ヒューゴー賞を獲得したサイバーパンクSFの先駆的作品「接続された女」、ユカタン半島に不時着した飛行機の乗客が体験した意外な事件を軸に、男女の性の落差を鋭くえぐった問題作「男たちの知らない女」など、つねにアメリカSF界の話題を独占し、注目をあつめつづけたティプトリーが、現代SFの頂点をきわめた華麗なる傑作中短篇全12篇を結集!
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
催涙雨
64
機械に繋がれた見目の良くない女性が美しく偶像的で素敵な生活を送ることを義務付けられた肉体をオペレートする。その過程でアイデンティティの所在が曖昧になっていく。世界に見放された人間が、偽物の身体でシミュレートする人生と自分を混同していく姿には読者に痛みに近い感覚を与える悲愴さがある。Pバークとポールの出会いは壮絶であまりにも哀しい。「接続された女」は設定もシナリオも文句のつけどころのないすばらしい作品だった。あとは「エイン博士の最後の飛行」「断層」「最後の午後に」も割りと好み。2020/05/22
miyu
45
何度も言うが私にはSFを読みこなす素質も感性もない。そういう人間にとってこの本は難儀だ。SFのプロ的な読者の皆様は「は?なに?このアヴァンギャルド理解出来ないわけ?信じられない!」と思われるだろう。ええ全く解りません(太字強調・笑)正直言って最近ようやくSFに触れ始めた自分にとってはどれも目新しくないのだ。しかし私が今までどっかで読んだであろうSFまがい作品こそパクリであったのだと今さらながらに気づいた。ほぼ1970年代初め発表作品だと思えばその着眼点やら展開は確かに驚きだし、彼女が元祖なのは間違いない。2016/12/04
zirou1984
44
俺の選ぶ厨二病を煽り立てるタイトルで賞第1位。かっこいい。特徴のある文体は時代がかった翻訳だからか原文からなのか。表題作以外にも「すべての種類のイエス」「乙女に映しておぼろげに」のタイトルは痺れるものがあるし、内容で言えば表題作に加え「接続された女」辺りは割と面白い。が、この短編集、最初と最後の解説がある意味本編並に面白いことになっていて正直感想に困っている。小説も面白いはずなのに、どう考えても著者の人生がそれ以上にとてつもないことになっているのだ。内容も含め、ここまでぶん投げられた感は久々な読書体験。2015/11/16
かとめくん
32
今読むと時代を感じさせられることになりました。「接続された女」なんか、サイバーパンク以前に書かれたことを考えるとすごいんだけど、相応に古びてもいる。全体的にしっくりこなかった部分もあった。異時間帯からやってきて好き勝手しゃべって帰っていく「乙女に映しておぼろげに」、人造人間を同期して操り商業利用する「接続された女」、遭難先で読めない行動をする母娘を描く「男たちの知らない女」あたりが好みでした。2014/11/13
くさてる
26
わたしにとっては、本当に分からない作品と、分からなくてもぎりぎりと心の芯が締めつけられるような作品と両方が収められた短編集。「愛はさだめ、さだめは死」「接続された女」「そしてわたしは失われた道をたどり、この場所を見出した」「男たちの知らない女」が後者です。「接続された女」は、いまとなっては古びたアイデア…という声が多いけれど、バークの孤独もデルフィの禍々しさも、時代によって変わるものではないと思うです。この圧倒的な寂しさ、繋がれなさ。たまらないです。2014/12/20