感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
absinthe
218
昔読んだときはさぱりわからなかったが、今読んでもまたわからない。それにしても面白い。今回は前回より面白かった気がする。社会で生きる、専門家のふりをした人々も、実際今生きている世界を理解していない。(自分も含めて)現実にこの不思議なゾーンと世界の往来で起こる出来事の数々は実際には身の回りの事とそう変わるわけではない。それにしても、どこかいやらしくて、憎めないキャラクター達の切れば血が出るような存在感。2020/05/21
中玉ケビン砂糖
91
、「ゾーン」という未知なる区域が存在し、正規ルートをたどらないと命を落とす危険があるが、その分未知の物質を手に入れることができてそれが高値で取引されている世界、「ストーカー」とはそれらのことを生業にしている案内人兼便利屋のことである、壁の内/外、超常現象、特殊能力者といえば、いくつかのアニメや漫画作品にオマージュがみられる古典的傑作といえるだろう、タルコフスキー監督が映画化しており、『惑星ソラリス』『サクリファイス』の次くらいに好き、その特徴といえば、炎の演出と水の演出が特に強調されている点だ2015/05/21
藤月はな(灯れ松明の火)
69
恋愛ホラーではなく、SFです。特に危険な「ゾーン」での描写の凄まじい緊迫感には、「ゾーン」=「劣化ウラン弾などの放射線で汚染され、戦争状態にある地」という意味にも取れるのではないかと考えます。だからこそ、「ストーカー」=「ゾーン」からの漂着物を命がけで持ち去り、生活する者という理由で恋人にも遠ざけられてしまったレッドの悲しみがひしひしと伝わってくる。生きるためとはいえ、そこから起きる差別を描き、「人は初めて遭ったものと完全に分かり合えない」という諦観がある。それでも最後の一文は人間への呪いでもあり、祈りだ2014/10/11
かえで
61
ロシアの兄弟作家によるSF。ストーカーは所謂あのストーカーではありません。異星の超文明が地球に遺していったと思われる謎の領域「ゾーン」。そこに残された物を命懸けで持ち出すものたち、それが「ストーカー」。そのストーカーのシュハルトが主人公。異星の超文明が遺したものとの接触という、ある種のファーストコンタクトもの。そのゾーン内では何が起こるかわからず、とてもハラハラさせられる。またゾーンの物品を巡る人間たちのやり取り、作品が投げ掛ける「知性」というものとは何かというテーマ。想像を捲し立てられる作品でした。2015/10/16
催涙雨
60
不思議な余韻のある作品だった。読んでいるあいだよりも読み終わったあとに振り返っているときのほうがこの作品の魅力に近づけているような気がする。物語としてはそれほど起伏に富むものではないのだけど、それがかえってあとになって染み通ってくるような独特の読後感に繋がっていた。この作品はゾーンとストーカーの対峙という構図にほとんどすべてが集約されている。残留物や怪現象をはじめとしたここに含まれるものすべてのその不思議さや理解できなさ、恐ろしさなどが「路傍のピクニック」という原題で説明できてしまうのも面白いと思う。2020/09/11