ハヤカワ文庫<br> 夜の翼

ハヤカワ文庫
夜の翼

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  • サイズ 文庫判/ページ数 303p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784150102500
  • NDC分類 933
  • Cコード C0197

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

新地学@児童書病発動中

127
本当に魅力的な小説だと思う。何回も読んでいるのだが、読むたびに愛着が深まる。遠い未来の地球で、聖地を目指して旅をする〈監視者〉の物語。SFというより、幻想的な文学の趣きがある。エキゾチックな中世風の社会の雰囲気の端々から顔を出す過ぎ去った地球の文明の歴史の堆積の描写がまさにSF。主流文学ではこのような時間の流れは表現しにくいだろう。主人公が罪の意識におびえて、内省的になっているのも面白い。優雅に空を舞う翔人アヴルエラのイメージが全編を支配していて、ページを閉じた後も読み手の脳裏に刻み込まれる。2016/04/08

MICK KICHI

82
「夜を沈め 心浮かべる そんな想い 君にはあるかい? 愛を飾る 瞳に揺れる 淡い炎 それが君への想い...」 山下達郎「夜の翼」 遠い未来、地球は科学技術の過度の発達と星間への奢った進出による報復によって退廃を極め、中世的デカダンスとギルドによる専門職社会となっていた。全編<監視者>或いは<記憶者>となった老人の目を通して語られるその世界は、幻想的でありながらも終末を予感させる。その中にあって出会った美しき<翔人>への秘めたる愛情こそが、物語の鍵である再生と救済につながる美しい情景のイメージを喚起させる。2019/12/18

催涙雨

54
最初のうちはSF的ガジェットとファンタジー的舞台の同居する幻想的な世界観をはじめ、とにかく設定方面にばかり関心が傾いていたのだが、読み終えた今は全体を通してとても良い作品だったと思っている。これは物語の着地点がこの世界観を存分に活かしたものであることがすごく大きい。それぞれの登場人物の個性だとか差別的表現、侵略者、ギルド…なんでもいいのだが、この作品に登場するたいていのものに意味合いをもたせる壮大なテーマに向かっていくところは読み物として素敵だと思うし、それらの繋がりがひとつの線のように見えて視界が開ける2019/06/08

Kajitt22

32
かそけき翼を広げ、夜を飛翔するほっそりと麗しい〈翔人〉アヴェルエラ。〈監視人〉から〈記憶者〉そして〈巡礼者〉となりロウムからペリ、ジョスレムへと旅をする私。征服されディストピアとなった未来を彷徨する魂の物語といえるかもしれない。空を飛ぶ夢を見なくなってどれほどだろう。もう一度、あの気持ち良さとわずかに感じる恐怖を味わいたいものだ。2018/06/02

はちくま

7
作者のことを寡聞にして知らず、けっこう昔の作品っぽいし、ちょうどヒッピー文化華やかな頃のラブ&ピースな話だという印象だったのだけど、実はバリバリの職業作家さんだったのですね。主人公が抑制の効いた人格のせいか、どうなるのかハラハラしつつも落ち着いて読める。脇を固める個性的な登場人物たちも、困ったちゃんもいるけど、みんな愛おしい。ギルドや侵略者の設定もしっかりしていて、さらっと読めるわりに隙がない。2015/04/14

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