内容説明
17世紀のオランダは市民社会の勃興期。時代の変化を敏感に嗅ぎ取り、時代の懐深く分け入ったフェルメールは、常に自己を模索しながら、主題の選択や人物配置、空間構成、光や質感の描写に独創的な才能を発揮し、静寂に支配された光と陰が綾なす傑作の数々を物していった。謎の天才画家といった神話に惑わされることなく、17世紀に生きた画家の素顔を浮かび上がらせ、歴史のいたずらに奔弄されつづけたフェルメール作品の魅力をわかりやすく、生き生きと語る気鋭の野心作。
目次
第1章 フェルメールの生涯
第2章 若きデルフト画家の歩み
第3章 飽くなき洗練と絶え間なき自己変革
第4章 単身像の風俗画を読む
第5章 女の居場所―風俗画が語る社会史
第6章 失われし画家を求めて―フェルメール忘却神話の真相
第7章 ファン・メーヘレン贋作事件―新たなる研究への転換点
第8章 真作と非真作―揺れ続ける鑑定
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ひこうきぐも
19
図書館で借りる。著者の小林頼子は「私はフェルメール」の訳者。とにかく徹底して資料を駆使して謎の画家フェルメールに迫る。17世紀のオランダの政治経済産業から地形からフェルメールの実家の大きさを測定。家族構成から遺産相続など実に理詰めで推理していく。フェルメールの師匠は誰か。なぜ宗教画から風俗画に転向したのか。フェルメールの現存する真作と贋作。贋作画家メールヘンの章もありなぜプロ評論家達がだまされたか。それ以後フェルメールの真偽にどう対処したのかなど。著者は現存するフェルメールは32作品とする。2013/08/24
中島直人
3
フェルメールの魅力が伝わってくる。最後の贋作エピソードが付け足しに感じられるほど、十分に面白い。2022/08/07
うみ
2
フェルメールの知らなかった面が次々に現れる。暮らしぶり、家の中、修業期間。謎めいた画家は、少しずつ姿を見せてくれる。それにつけても、かの贋作事件はひどい。何回見ても、とてもフェルメールの作品とは思えないあれを、どうして判定しちゃったのか。そのわけを教えられた今も、やっぱり納得できないなあ。今もって、真作か非真作か論議の別れる絵もある。フェルメールをおおう霧は、なかなか晴れてくれない。2017/01/29
窓辺のクロッカス
2
フェルメールの作品にどうして惹かれるのか、その訳を知りたくて手にとった1冊です。技術的な考察は難しかったけれど、寡作な画家の思考を辿る道筋が見えたように思います。先日、ようやく上野で二人の真珠を身につけた美しい少女達に会えました。2012/09/17
ロバーツ
1
持っている本の中では最も様式を重視しているフェルメール論。2022/04/12
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