中公文庫<br> 日の名残り

中公文庫
日の名残り

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  • サイズ 文庫判/ページ数 366p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784122020634
  • NDC分類 933
  • Cコード C1197

内容説明

短い旅に出た老執事が、美しい田園風景の道すがら回想する、古き良き時代の英国。長年仕えた先代の主人への敬慕、執事の規範のような亡父、女中頭に寄せた淡い想い、両次大戦間に邸内で催された重要な外交会議の数々―。全ては遠い過去と消えたが、二度と戻らぬ時ゆえに、それは一層輝きを増して胸に生き続ける。英国の神髄を描いて静かな感動を呼んだ、英国最高の文学賞ブッカー賞受賞作品。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

NAO

49
滅多にない休暇を得て小旅行に出たスティーヴンスは、英国執事を代表するような老執事。道中彼が回想する、輝かしかった過去や挫折。自分の記憶に自信を持ち、自分の判断が何より正しいと考えているスティーブンスだが、かつての女中頭ミス・ケントンと出会ったころから、彼の記憶のあやふやさが浮き彫りになってくる。カズオ・イシグロが描く、何ものかに強く拘泥するために起こってしまう記憶のあいまいさと、記憶のすり替え。だが、過去に縛られている老執事に作者がかける言葉は、かぎりなく優しい。「夕方が一日でいちばんいい時間だ」2015/11/08

メタボン

42
☆☆☆☆☆ 翻訳とは思えぬほど文体がしっくりとしていた。執事スティーブンスの黄昏、女中頭ミス・ケントンの黄昏、そして大英帝国の黄昏を、しっとりと包み込むラストの夕暮れのシーンは極めて余韻が深く印象的。執事の生硬な語りが初めのうちはもどかしかったが(ミス・ケントンへの態度は最後までもどかしかった)、「品格」を意識するようになると共感できた。ところどころに表れるユーモア(特にカーディナルに「生命の神秘」を教えようと苦心するところ)や、ダーリントン・ホールでの討議シーンは非常に面白かった。流石ブッカー賞受賞作。2021/02/14

kasim

40
四半世紀ぶりの再読。細部は忘れていたけど、ほぼ記憶通りなのにも驚き。それだけ印象深かったのだろう。愚直な執事の信頼できない語り、でも読者を上から目線に運ばず主人公に寄り添わせる。イシグロの基本は第一作から一貫しているが、この作品は抑制された切なさとユーモアの絶妙の混淆がもう職人技と言いたい。夕暮れの突堤のやわらかな寂しさは唐津焼か萩焼のよう。ブッカー賞が日本で知られるきっかけにもなった作品だったなあ。2021/02/10

との

29
お正月はカズオイシグロを読もうと思っていたのに、村上春樹に行ってしまいました。これが初のイシグロ作品。とても繊細な雰囲気で、読んでしまうのがもったいなくて少しずつ少しずつ読んだ。なにか大きな展開がある訳ではないけれど、静かな語り口で回想が綴られていく。執事としての仕事に誇りと品格を持ち、不器用で、ジョークの言い方を勉強しなくては‥みたいなスティーブンスがかわいい。でも上司だったらイヤだろうな。2018/01/17

フーミン

20
執事の仕事に誇りと品格を失わず生きようとしたちょっとシャイなスティーブンスにとても親しみを感じました。イギリスの誇りである執事という職業は現在もスティーブンスのような意思をもって継続されているのでしょうか。カズオイシグロの文章はとてもきめ細やかにナイーブに伝えてくれます。2017/12/12

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