目次
第1章 精神と文体とに関する思想
第2章 神なき人間の惨めさ
第3章 賭の必要性について
第4章 信仰の手段について
第5章 正義と現象の理由
第6章 哲学者たち
第7章 道徳と教義
第8章 キリスト教の基礎
著者等紹介
パスカル[パスカル][Pascal,Blaise]
1623~62。フランスの数学者、物理学者、哲学者。幼少のころから数学に天分を発揮、16歳で『円錐曲線試論』を発表し世を驚嘆させる。「パスカルの原理」を発見するなど科学研究でも業績をあげる。後年は「プロヴァンシアル」の名で知られる書簡を通して、イエズス会の弛緩した道徳観を攻撃、一大センセーションをまきおこした。主力を注いだ著作『護教論』は完成を見ることなく、残されたその準備ノートが、死後『パンセ』として出版された
前田陽一[マエダヨウイチ]
1911年(明治44年)群馬県生まれ。東京大学仏文学科卒。パリ大学に留学。第一高等学校教授、東京大学助教授を経て同大学教授となる。東京大学名誉教授。1987年(昭和62年)逝去
由木康[ユウキコウ]
1896年(明治29年)鳥取県生まれ。関西学院大学文学部卒。聖書と神学を学び、東京二葉独立教会(現・東中野教会)牧師となり50年間在任。同教会名誉牧師。1985年(昭和60年)逝去
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感想・レビュー
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nekozuki
17
遺稿をまとめたものであり、散文的ではあるがその走り書き的一文が心を捉える。「人間は考える葦である(実際はこの通りの文章はない)」は有名だが、Ⅰ巻で最も心に残ったのは「われわれの本性は運動のうちにある。完全な静止は死である。」という言葉。加藤秀行『キャピタル』にも引用されている。考え動き続けなければならない。学ぶことを忘れ停滞した者は緩やかに死に向かうだけだと思う。2017/03/18
吟遊
15
パスカルは、モンテーニュ〜ラ・ロシュフコーといったモラリストの系譜に置かれることあり、ぼくは世俗的な話を中心に進むのかと思っていた。だが、パスカルは熱心なキリスト教徒(ジャンセニスム)であり、実はこの本は神学・哲学の本、と言ってもいいくらい。有名な「考える葦」の比喩にしても、実は人間の偉大さという一面を述べているのであり、その反面には「悲惨さ」が必ずつきまとい、その間で宙ぶらりんになり、理性は停止し、キリスト教の信仰以外に真理と幸福はない、という道筋のうちにある、と読める。信仰の書である。2017/03/09
tokko
14
「われわれは絶壁が見えないようにするために、何か目をさえぎるものを前方においた後、安心して絶壁のほうへ走っているのである。(183)」という一文を鷲田清一さんのエッセーで見かけてから、どうしても頭から離れなかったのでこの機会にと『パンセ』を読むことにした。有名な「考える葦」を含むこの大著は、普遍性を持つがゆえに詩的な暗示に富んだ「読みごたえ」のある箴言集でした。2016/09/12
ともブン
12
幾何学や物理学で著名なパスカル。31歳の時に神との神秘的な出会いを経て求道生活に邁進したと本論の添え書きにある。パスカルの信仰に対する思いを柱に展開される思想書だが、残念ながら本来書かれるはずだった著作の原稿+様々なメモ書きなどを後年の研究者たちによって集められたものであり、斜線で消された行や走り書きで注釈がついたものなどさえも含まれているため、筋道立った構成にはなっておらず繰り返しがくどいと感じる。裏を返せばパスカルの息遣いや思想がありありと浮かぶ、研究者にとってこれ以上ない資料だろう。下巻へ続く。2023/02/22
エジー@中小企業診断士
1
パスカルの死後に出版された未完の著作「護教論」の準備ノート、断章。思想・随想の寄せ集めであり宗教、哲学、道徳、政治、言語など後世に多大な影響を与えた。啓蒙主義、ロマン主義、実存主義、構造主義、ポスト構造主義等の思潮はパスカルの提起した問題に応答を続けてきた。断章139気を紛らすこと。人間の不幸は部屋の中に静かにとどまっていられないことに由来する。断章206この無限の空間、その永遠の沈黙が私には恐ろしい。断章347人間はひとくきの葦にすぎない。だがそれは考える葦である。我々の尊厳の全ては考えることにある。2024/05/06