内容説明
唯一の超大国として、最も進んだ科学技術を誇るアメリカ。だが、キリスト教の倫理観に縛られ、二億挺を超す銃が野放しにされるなど、「性」と「暴力」の問題については、前近代的な顔を持つ。それはなぜか―。この国の特異な成り立ちから繙き、現在、国家・世論を二分する、妊娠中絶、同性愛、異人種間結婚、銃規制、幼児虐待、環境差別、核の行使などの問題から、混迷を深めるいまのアメリカを浮き彫りにする。
目次
第1部 「性と暴力の特異国」の成立―植民地時代~一九六〇年代(「性の特異国」の軌跡;「暴力の特異国」への道)
第2部 現代アメリカの苦悩―一九七〇年代~(「性革命」が生んだ波紋;悪循環に陥ったアメリカ社会;「暴力の特異国」と国際社会)
著者等紹介
鈴木透[スズキトオル]
1964(昭和39)年東京都生まれ。87年慶應義塾大学文学部卒業。92年同大学院文学研究科博士課程修了。慶應義塾大学法学部教授。専攻、アメリカ文化研究、現代アメリカ論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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skunk_c
58
タイトルから少し猥雑な内容かなと思い、手を付けるのをためらっていたが、往々にして副題に真実がある典型例。理念の国アメリカの持つ矛盾として、イギリスのヴィクトリア時代を引きずる性道徳感がどう変貌しつつあるかと、自分たちの集団を自力で防衛するリンチ(私刑)が、今や対外戦争にまで持ち込まれているという見立て。連邦国家ならではの州単位、特に南部の価値観の特異性が目だった。「疑わしきは罰する」リンチ的手法は、9.11後に大ヒットしたドラマ『24』シリーズに顕著で、あれが流行るアメリカの恐ろしさを改めて思い出した。2023/04/14
chisarunn
9
現代アメリカ論、2006年の本なので情報も最新ではないが、20世紀~21世紀のアメリカの病理とはなにかというのが「性と暴力」という切り口で書かれていてわかりやすい。各章、どれも面白いが、「銃社会の迷宮」の章には20年近く経った今も生々しく傷口をさらしているのはどういうわけなのか端的に説明されている。先日も銃乱射事件が起きていたが、未成年者が簡単に銃を購入できる、また銃の所持を社会が容認している事実がなぜいつまでたっても変わらないのかこの章を読んでよくわかった。2022/06/20
sk
8
性と暴力の問題とは他者とのかかわり合いの問題であり、新天地で人間関係を形成していったアメリカ人にとっては重要な問題だった。アメリカがなぜ性と暴力の大国であるかを解き明かす。2019/11/06
miyatatsu
5
非常に考えさせられる本でした。現在のアメリカが抱える問題の発生原因を知ることが出来ました。2018/12/01
ゆずこまめ
5
銃を手放すのをあれほど拒否するのはなぜなのか、全くわからなかったけど、少し理解できたような気がします。 新しい国とはいえアメリカにも独自の歴史、文化、価値観がある。2018/10/06