内容説明
将軍膝下の江戸城にあって幕政参加の野心を抱いていた松浦清は、猟官運動までした甲斐も空しく、夢果すことなく47歳の若さで隠居。それより82歳で没するまで、本所平戸藩下屋敷で、静山を号し、悠悠自適の余生を送った。この隠居暮らしのなか、幼馴染の林述斎の勧めで、静山はその博識と、大名から出入り職人にいたる多彩な情報源をもとに、膨大な随筆『甲子夜話』を執筆、江戸の実相を生き生きと書き留め、今日に伝えた。
目次
大名暮らし
殿様が大名を辞めるとき
老侯の時代
本所下屋敷の人々
隠居同士
不思議降る町
殿様と鼠小僧
家族の肖像
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
82
「甲子夜話」という江戸時代の隠居した殿様が書いた随筆集の解説兼内容紹介です。平戸藩の殿様が隠居した後も江戸の本所に残り様々な耳にしたことや見たことなどをメモにつづって書いたもので非常に楽しく読みました。「御畳奉行」に似ていますね。この甲子夜話は今では平凡社の東洋文庫くらいでしか手に入らずまた値段も高いということで読みたいとは思っているのですが・・・・。2022/10/09
zico
2
旧平田藩主が江戸での隠居生活を回想した随筆のエピソード、解説書。殿様が意外にも奉公人や部下に気を使ったり、周りの昇進や猟官を妬んだり、隠居生活をあれこれ悩んだり、会社員として大変共感した。また、そんな事を悩める事が出来たのは、当時の江戸が平和な街で豊かな生活が出来た裏返しでもあり、益々江戸への憧れが増した。また大江戸博物館に行きたくなった。商い世伝8話も買った事だし、連休は江戸三昧にしよう。2020/02/22
印度 洋一郎
2
47歳で隠居した平戸藩のお殿様が気ままな御隠居生活の中で収集した話題から伺う江戸後期の風景。密かなブームになっていた、高齢化した旗本の長寿番付(なかなか定年退職しないから)、デマも混じっている怪異譚、隠居大名同士の呑気な交流などなど楽しくも不思議な話が多い。豆腐ばかり食べるので家来から「今日は時化で豆腐が取れませんでした」とごまかされるバカ殿や、武蔵坊弁慶マニアで隠居後「弁慶」と名乗ろうとして幕府から「そんな変な名前は認められない」と却下される殿様など、同じ殿様の目から見たヘンなお殿様達がおかしい。2010/10/13
恵
1
老衰御褒美って制度、初めて知って少し驚き。いつまでも隠居しないのは悪弊かと思ってたけど、当時の許可する常識年齢が意外と高かったのだと納得。2010/08/21