新潮文庫<br> エイジ・オブ・イノセンス―汚れなき情事

新潮文庫
エイジ・オブ・イノセンス―汚れなき情事

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  • サイズ 文庫判/ページ数 481p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784102413012
  • NDC分類 933
  • Cコード C0197

内容説明

1870年代のニューヨーク、格式や富の大小ではっきり階級の定まった社交界に、長年ヨーロッパで暮し自由な精神を身につけたエレンが戻ってきた。彼女は伯爵である夫との離婚を望み、いとこの婚約者で弁護士のアーチャーの依頼人となる。離婚は大変な醜聞であり、一族の不名誉である。アーチャーはエレンに魅かれ、真摯な愛を貫こうとするが果たせない。ピューリッツァー賞受賞作。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

316
この小説全体を支配する基本構造は"アンビヴァレンス"だ。それは登場人物たち個々人の情動ももちろんのこと、当時の社会全体が抱いていた共同幻想のあり方においても。物語の背景は1870年代ニューヨークの上流社会に置かれているが、そこはヨーロッパをも凌駕する富と歓楽の都だった。しかし、同時にどこまでいってもそこは新世界であり、ヨーロッパの貴族社会を羨望していた。その没落の姿にこそと言ってもいいかもしれない。作中でアンビヴァレントな状態を体現するのはアーチャーであるが、メイもまた、そしてエレンもまたそうなのである。2017/03/09

遥かなる想い

188
1870年代の「旧いニューヨーク」と呼ばれる 上流社会が題材であるが、まるで 遠くから 舞台を眺めているような感覚だった。 この時代のイノセンス 「知らないですませる能力」の象徴である婚約者メイと 自由を求めるエレンとのせめぎ合いが面白い。 清純無垢なメイの無言のメッセージは怖く、 最後に明かされたメイの息子へのメッセージは強く哀しい ..アーチャーも エレンも 既存の上流階級の 狭い価値観の掌の上で 転がされていた..そんな印象の物語だった。2017/06/14

ケイ

124
男性が読むと、アーチャーの考えについてどのように思うのだろうか。女性である作者の考えが透けて見えてくるような作品だ。イノセンスとは何か?婚約者のメイは、世間的には汚されておらず罪のない美しい若い女性だが、彼女の計算高さは女性が生来持つもので、それを駆使するのはイノセントなのかどうか。一方のエレンは、この時代のこの階級の中では、枠にとらわれず自らの意思に忠実であろうと努めた女性。その2人をアーチャーの両脇に配置する事で、作者が自分の心にある考えを男性の目を通して表現したように感じた。2017/03/06

まふ

113
1870年代のニューヨーク上流社会を舞台としたラヴ・ロマンス。第2部になりウソのようにぐいぐいと心理描写を含む人間関係の綾のような文章が進む。主人公のアーチャーがインテリすぎるのか、相手のエレンの肉体を奪わずプラトニックな関係のまま最後まで続くところが、ある意味の「清涼感」を与えて読後感はスッキリ、爽やかである。妻のメイも(解説者はけなしているが)心の葛藤を見せずに(表面上は)淡々と過ごすところがエライ!と判官びいきのわたしは独りごちた。再読すればもっといろいろと発見できるかもしれない秀作だ。G1000。2023/09/03

NAO

63
ヨーロッパ以上に格式と伝統を重んじる19世紀のアメリカ上流階級社会。本作品は、その狭苦しさに苦しみ自由を求める主人公の葛藤が描かれている。上流社会に身を置きながらもその窮屈さに倦み自由に憧れる主人公がエレンに惹かれるのは当然の成り行きだが、エレンと二人で自由な世界に飛び出す勇気はなく妻に周囲を固められたまま逡巡を続ける。そんな自由を求める主人公やエレンの精神がイノセントなのかと思ったのだが、解説によると夫の不義を知りながらも何も知らないかのように無垢を装うことを表しているのだそうで、全く見当違いだった。2024/01/08

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