内容説明
わずか一歳で光と音を失い、七歳までことばの存在を知らなかったヘレン・ケラー。三重苦の彼女は、サリバン先生の愛に導かれ「ことばの世界」に目ざめる。そして負けず嫌いで前向きな性格と驚異的な努力により、十九歳で名門ラドクリフ・カレッジ(ハーバード大学の女子部)に合格―知的好奇心に満ちた日々を綴った若き日の自伝。大人のための新訳。
著者等紹介
ケラー,ヘレン[ケラー,ヘレン][Keller,Helen]
1880‐1968。著述家、社会福祉事業家。1880(明治13)年、米国生れ。熱病のため、一歳で聴覚と視覚を失ったが、七歳からアン・M・サリバンによって教育を受け、十九歳でハーバード大学ラドクリフ・カレッジに合格。三重の障害をもって大学教育を終了した世界最初の人となった。全米および海外各地で講演を行い、福祉活動に貢献。三度の来日を果たし、1948(昭和23)年には身体障害者福祉法制定の動きに影響を与えた
小倉慶郎[オグラヨシロウ]
1961(昭和36)年、東京生れ。大阪外国語大学講師、ノンフィクション翻訳家
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感想・レビュー
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はたっぴ
105
ヘレン・ケラーがサリバン先生に出逢い、「ウォーター!」と叫んだ後の半生を自ら綴った一冊。気付けば付箋だらけになってしまった。幼少期に聴覚と視覚を失い、言葉そのものを知らなかったヘレンが進んだ学問の道。辞書を片手に勉強することは不可能で、覚えた知識を片っ端から丸暗記して脳に蓄えるしかない。受験のための知識が頭に詰め込まれるほど、大好きな本の一節がヘレンの記憶からこぼれ落ちていくのが切なくてならなかった。サリバン先生の人生をかけた献身的な教育も含めて、人間に不可能の文字はないと改めて思わせてくれる作品だった。2017/08/02
サク
54
1歳7ヶ月にして、光・音・言葉を奪われた少女の苦悩が読者の胸を熱くする。絵本『おおきなあな』が浮かぶ。彼女はいくつもの深い苦悩という『あな』に落ちながら、サリバン先生という自らも障害を克服し使命を自覚した人との必然的な出会いから、何度も『あな』から引き上げられ、ケラーの困難と言われた『あな』を見事に一つ一つ埋めていくことができた。サリバン先生の使命の自覚なくしてヘレン・ケラーの存在はなかった。また、ヘレン・ケラーの存在なくして世界中の障害を持った人々に勇気は与えられなかった。使命を自覚した人は強い。2015/04/30
なる
50
ヘレン・ケラーを詳しく知らなくて目が見えなかった人くらいの情報しかなかったのが、目どころか耳も聞こえない、当初は話せないという三重苦を抱えた人だった。生まれて19ヶ月で病気を患うまで知っていた世界と、その後の世界について自伝として詳しく述べられている。なくてはならない存在だったサリバン先生(彼女も視覚障害)との出会いや、電話で有名なグラハム・ベル(聾者教育に熱心だった)、マーク・トウェインとの交流もあったことなども丁寧に綴られている。ほとんど伝達手段を知らなかった彼女が自分の言葉を見つける下りは染み入る。2022/06/22
けいご
45
何も聞こえず何も見えない暗闇で本を読むってどんな感じなんだろう?光を見る事が出来ないのに光を見つけるってどう言う事だろう?身体に何不十分なく生まれた自分にとっては想像もつかないや。この本に記述されている言葉は視覚より文字として読み進めるとさほど面白くもないけど、光と音がない世界から発せられた言葉として読み進めるとびっくりするぐらい煌びやかに感じました。人間は見えなくても聞こえなくても大切な事を掴むことが出来るんだよ?そんな一冊でした★2021/05/08
Kircheis
33
★★★★★ ヘレンが大学在学中に書いた自伝。 ヘレンの成功体験はサリバン先生はじめ周りのサポート無しには成し得なかったものであり、短い中でも多くのことを考えさせられる良書である。2018/02/04