内容説明
はじまりはN国・T地方・Y県の通学列車。不良高校生の些細な喧嘩がなぜヤクザを巻き込む全面抗争にまで暴走したのか?あの“戦争”から数年後、執拗に真相を追う青年の姿は、あたかも探偵であり、暗号解読者であり、哲学者であり、そして小説家でもあり…。世界の激動に曝され、迷走する日本を鋭く転写する「ABC戦争」他、文学の最先端で闘い続ける著者の初期ベスト作品。
著者等紹介
阿部和重[アベカズシゲ]
1968(昭和43)年、山形県生れ。’94(平成6)年『アメリカの夜』で群像新人文学賞受賞。’99年『無情の世界』で野間文芸新人賞受賞
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
静
24
終始物語から突き放されているような感覚に陥りました。「アメリカの夜」からさらに磨きがかかって理解するのが難しい…。「ヴェロニカハートの幻影」は冒頭でこれは日常的で読みやすいかな?と思ったのですが、思いがけないラストに辿り着きました。ただ、それさえも許容してしまう不思議な魅力が込められています。少し阿部和重さんについて調べたところ、初期のアメリカの夜とABC戦争の二作品は、数ある作品の中でも異彩を放っているとのこと。これから文体、内容を含めどのように変化していくのか、次の作品が楽しみです。2019/04/24
hit4papa
22
理解し難いというか、深読みさえも拒絶してしまうような作品集です。まるで、こんな小説書きましたが、何か? と開き直っているような。他の収録作も同じような趣です。書いていることは分かる。何を訴えているのかがよく分からない。物事はそんな見方もあるんですよ と囁かれているようです。衒学的とは言えないまでも、屁理屈をこねくり回わされている気分ですが、こういう作品は嫌いではありません。ふんふん、なるほどねと、この屁理屈に身をゆだねていれば良いのでしょう。そうすると、かなり楽しくなってきます(多分)。 2016/08/13
James Hayashi
21
ぶっ飛び過ぎなのかよく分からないがついていけない。理解し難い3つの中編。シンセミアと同じく山形を中心舞台にしているが、抽象的でありまた露骨すぎる表現が多様。昨日読んだシンセミアの余韻が強すぎ、集中力も怠った。2017/07/14
Fondsaule
13
★★★☆☆ 「ABC戦争」「公爵夫人邸の午後のパーティー」「ヴェロニカ・ハートの幻影」の3編収録。行きつ戻りつ、すべてが言い訳じみた文章が延々と続く。読むリズムに乗るまでに少し時間がかかるが、調子が出てきたところで終わってしまった感じ。でもこれ以上続けれられても困ったかも知れない。2018/02/06
スミス市松
13
いってしまえば本書に収められた短編はどれも「やったもん勝ち」なのだが、一方で私自身心のどこかでこの「やったもん」の到来を待ち望んでいた節もあり、要するにこの短編集は痛快だったのである。たとえば「地方高校生の抗争」といういかにも陳腐な出来事を過剰な記号化と形式化および既存の文学や政治学の模倣によってまったくの「別様の感じ」を与えてしまう「ABC戦争」は、その異物と異物を接続する姿勢において、アルゼンチン出身のフリオなる男が書いた南米のどこかの高速道路を舞台にした短編小説を彷彿とさせるものがある。2012/04/12