内容説明
高度成長期、縫製一筋に生きてきた私は小さな工場を経営し、苦しくとも充実した日々を送っていた。が、中国製の安価な製品が容赦なく経営を圧迫し始める。長引く不況、膨れ上がる借金。万策尽き果てた時、私は妻のガンを知った…。「これからは名前で呼んで」呟く妻、なけなしの五十万円、古ぼけたワゴン。二人きりの最後の旅が始まった―。
目次
序章 冬の日
第1章 一緒に―西へ
第2章 腕の温もり
第3章 鳥取砂丘
第4章 富士山
第5章 夏の海辺、死の影
第6章 鈴の音
終章 喪の時
著者等紹介
清水久典[シミズヒサノリ]
1947(昭和22)年、石川県生れ。中学卒業後、’63年から縫製会社に勤務。以後、高度成長期を縫製業一筋に生きる。やがて、自分の工場も経営するようになるが、中国製の安価な製品におされて経営は傾き、借金を背負う
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感想・レビュー
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kinupon
53
切なくて、悲しくて、そして暖かい・・・・・。こんな夫婦のあり方って素晴らしいと感じます。2015/04/05
メタボン
30
☆☆☆☆ 再読。映画も印象に残っている。自分が筆者の立場だったらと思うと、本当に胸がしめつけられるようだ。いろいろな看取り方があると思うが、この境遇は辛すぎる。二人きりの最後の旅路は、夫にとっては妻への祈りと償いの旅であり、妻にとっては初めて夫と寄り添える安息の旅であった。そう信じたい。でなければあまりにも悲惨だ。2015/09/18
ちゃんみー
28
チャメさんの感想を拝見し読んでいたことを思い出して登録。車で旅をしながら妻との最期の時を過ごした彼は身勝手なのか?それともこれこそ夫婦の姿なのか?と思ったことを思い出しました。
けいた@読書中はお静かに
27
読むのにものすごく精神力が必要です。膨れ上がる借金、万策尽き果てた時に妻のガンが発覚。死を前にふたりきりの最後の旅をまとめた実話をもとにした小説。あまりにも切なくて途中で読めなりそうなのを、踏ん張って読破。妻の最後はやっぱり泣いちゃうね。苦しかったけど、いい小説でした。2015/08/23
遊々亭おさる
24
平成15年9月初版。事業に失敗した男が癌に侵されて余命いくばくもない妻と古ぼけたワゴンで回った放浪の旅の記録。人生に挫折して名誉もプライドも無くした男が初めて気づいたものは、何物にも代えがたい妻という存在。初めから汚れ仕事を度外視して職探しをしている所など、「オッサン、しっかりせえよ」と思えるところも散見するが、夫婦としての長い空白を埋める旅路を続けた二人の旅路は切なくも温かい。少くとも、夫婦でいた甲斐を見出だせる濃密な時間を共有していたのではないか。隣にいる妻との距離を考え直すきっかけになりそうな一冊。2015/05/23