内容説明
山中に捨てられ、長じて名刀工・源清麿に師事した巨躯の野人・鬼麿は、亡き師が心ならずも遺した数打ちの駄刀を諸国に捜し、折り捨てる旅に出た。試し剣術独特の構えから繰り出されるその長刀は、人も刀も石をも鉄も瞬時に切り裂く。中山道、野麦街道、丹波路、山陰道と、師の足跡を追い、女を惹きつけ、伊賀者に追われつつ、異色のヒーローが繰り広げる斬人剣八番勝負。
目次
1番勝負 氷柱(つらら)折り
2番勝負 古釣瓶
3番勝負 片車
4番勝負 面割り
5番勝負 雁金
6番勝負 潜り袈裟
7番勝負 摺付け
8番勝負 眉間割り
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
文庫フリーク@灯れ松明の火
42
山本兼一さん『おれは清麿』読了後、続きを読む感覚で再読。割腹した四谷正宗と称される名刀工・山浦清麿。その遺言‐とある理由で江戸から失踪せざるを得なかった旅の途中、困窮し止むなく鍛刀した甲伏せの刀。清麿にとっては恥となる駄作「あんなものを残してゆくかと思うと・・俺は・・折ってくれ、一振り残らず。捜し出して・・」遺言を託されたのは、その旅の途中、清麿に拾われ弟子となった鬼麿。捨て子として道々の輩(サンカ)に育てられ、清麿に拾われた少年・鬼麿は成長し,身長六尺五寸(約197cm)体重三十二貫(約120kg)→続2012/07/14
わたなべよしお
23
久しぶりだけど、やっぱり隆慶一郎さんはいいよね。主人公の鬼麿は山窩で刀工。山窩や傀儡子らをはじめとする支配を嫌い、自由を求める者たちを常に視線に捉えるところも隆さんらしいし。それ以上に鬼麿の生き様やストーリーが痛快だ。まあ、とにかく、もう少し生きていて作品を書いて欲しかったよなぁ。2022/10/12
まめこ
23
★★★★★やむなく量産した刀を見つけて全て折ってくれ…師匠の今際の言葉に従い中山道から出雲へと旅に出る鬼麿。刀工名高い清麿師匠だが、行く先々で女に惚れられてるわ、追っ手と死闘繰り広げてるわ、困った師匠なのだ。師匠が師匠なら弟子も弟子(笑)。天晴れな乙女心のおりんさん、生意気な山窩のない、3人+追っ手の旅は謎とスリルとお色気に溢れて滅法楽しい~!当時の道中の様子を伝える蘊蓄もまた楽し。2021/10/18
kaoru
18
江戸時代を舞台にしたロードノベル。主人公とその師匠の職人としての美学、男としての生きざま、異形の剣術。とにかくかっこいい。また、各地で遭遇する事件は二重構造になっていて、キャラの魅力と共に楽しめます。2016/04/03
ひこまる
15
ストーリーのテンポの良さや主人公の桁外れの強さ(それにエロさw)は相変わらずの隆慶一郎ならではで大変面白かったが、舞台が珍しく幕末なので敵が全体的に御家や名誉に縛られていて戦国の頃のような野性味に欠けている感じがしたのは仕方ないのかなあ。当主人公鬼麿を前田慶次郎や松永誠一郎など作品を越えた主人公キャラと対決させればどうなるのか??・・・隆慶一郎の作品にはそういう読後の想像も本当に楽しい。2013/08/30