出版社内容情報
シャム(タイ)の古都で暗躍した山田長政と、切支丹の冒険家・ペドロ岐部――二人の生き方を通して、日本人とは何かを探る長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ehirano1
99
著者の「海と毒草」を読んだ時の読感が良くなく、以来著者の作品は避けていましたがこれは良かったです。「地上の王国」を目指す漢と「天上の王国」を目指す漢が終始淡々と描かれているのが非常に印象的でした。また、ペドロ岐部のことをもっと知りたくなりましたので「銃と十字架」へ進もうと思います。2017/07/15
優希
77
自分の信念を持って国を飛び出した山田長政とペドロ岐部。「地上の王国」と「天上の王国」を作ろうとした2人の男を通じ、日本人とは、信仰とは何かを考えさせられました。禁教の日本において、切支丹であることは国への裏切りであり、命すら危うい事実が突きつけられているのに、自らの想いを貫く姿から見えるのは己の覚悟のほかありません。2018/04/29
James Hayashi
36
資料が少ないのであろう。殆ど創作のストーリーと思われるし、書き方も甘い。それに反し、国内へ戻ったペドロ岐部は資料がある為か、かなり力強く胸を打つ。またマカオでの記述も北京語であり、広東語でない事も不自然さを感じた。歴史小説であろうが詰めの甘さが目立つ。記録文学でなくフィクション。2018/05/11
Gotoran
33
単身、海と砂漠を渡ってローマまで行き神父になったペトロ岐部と、タイのアユタヤ朝時代に王女と結婚したともいわれるほどの栄華を誇った山田長政の二人を描いた小説。藤蔵こと、山田長政の野望と裏切りに満ちたストーリーが面白い。また、同時代のキリシタンであるペドロ岐部が、もう一人の主人公でもある。正反対の価値観の二人が、互いに認め合うようになる。めくるめく冒険活劇の中にも、著者らしい哲学的・宗教的な問題も織り込められていて、読み応えがあった。 2024/02/08
たんかれ~
27
タイで活躍した有名な山田長政、野心の塊でその実力でアユタヤの中枢で活躍してゆく様は日本人として痛快です。権謀算術渦巻く王宮、クーデター、暗躍するオークヤ・カラホーム。中国商人阮子竜の言葉「アユタヤは怖ろしい町だ」。隙の無い長政だが最後はヨターティプ王女という唯一の弱点に付け込まれました。もう一人の主役ペドロ岐部。あの時代にほぼ独力でヨーロッパへ赴き、司祭になり帰国とスゴイ。長政と対照的だけどどこか似ている。実際の山田長政の記録は少ないそうです。本作もほぼフィクションだろうけど、リアルで面白かったです。2020/06/01