新潮文庫<br> 銀杏散りやまず

新潮文庫
銀杏散りやまず

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  • サイズ 文庫判/ページ数 456p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784101068091
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

内容説明

すべてを棄てて文学に打ち込んできた自分の半生は、父が大切に思い慈しんできたものを黙殺するものであった―。父の死から受けた哀切な心の痛みは、父、そして一族の歴史を辿る旅へと著者を駆り立てる。熱い想いに呼応するかのように次々と現れる関連古文書。資料を読み解きながら、想像豊かに祖先の喜怒哀楽を再現する。古代から現代へ、甲州を舞台に繰り広げられる歴史絵巻。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

あきあかね

27
 学習院大学で毎年開かれている辻邦生作品の朗読会。昨年の『回廊にて』で初めて参加したが、豊かな自然に包まれた校舎の瀟洒な雰囲気と、若い世代の瑞々しい声によって再構築される物語世界にすっかり魅了されてしまった。今年はコロナ禍の中、先週、オンラインで『銀杏散りやまず』が語られた。 辻邦生は、小説、絵画、音楽、映画などについて数多のエッセイを著したが、父親について、自身のルーツについて書いたこの本が、辻邦生という人間の内奥を最も鮮やかに示しているように思えた。⇒2020/10/27

ソングライン

11
新聞記者として一家を養い、琵琶という芸道にも精通した父の死、故郷山梨の裕福な医家の息子に生まれた父は何故、幼い時に故郷を離れ、二度と戻ることがなかったのか。父の生涯を探る作者の旅は、江戸時代中期、辻保順病院を立ち上げた初代守瓶から現代へと続く医家辻家の盛衰を明らかにしていきます。辻家古文書を読み解いていく中で、江戸、明治、大正の時代に甲州に暮らした人々の生活も垣間見ることができます。作中に登場する9代目院長辻守昭氏が開業していた場所が偶然にも私のジョギングコースの近くにあり訪ねてみました。2018/07/21

sabosashi

4
父への想いから始まって家の系譜を通して過去が拡がってくるダイナミックス感はたえられないほどの昂揚をもたらす。あらゆるエピソードに魅力を感じる。感情を超えた叙事性といってもいいだろうか。この地下水脈の広範さ、宝庫そのもの。しかしそこには喜怒哀楽がみちていて当事者たちにとってはそのときそのときが必死であった。いかなる個人といえどもそんなものの前に立たされれば眼がくらんでしまいかねない。つまり個人の自我意識を中心とした近代文学が見事に相対化されてしまう。しかも著者自身が自らが相対化されているのを実感する。2013/11/29

小谷野敦

2
父の死を契機に、辻家の先祖のことを調べていく先祖もの長編随筆。私はこんなに調べがつく立派な先祖を持っていないので羨ましく感じるが、最初にさだまさしの「防人の詩」を礼賛しているのを見て、作家としては妙に通俗的だなあと思ったが、父や先祖への対し方も作家としては屈折がなさすぎるとすら思った。2023/05/13

まりこ

2
父の死から祖先を調べる。江戸時代の日記には囲炉裏話で浮世の出来事がある。それについての作者の見方、コメントが面白い。家族や郷党の人々の事を考え、その思いやりの網目のなかで生きている呼吸の温かさ。さだまさしの生生流転を初めて知ったが『ささやかでいいから 優しくなりたい 素直に生きてゆきたい』しみる。2021/02/22

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