新潮文庫<br> 千羽鶴 (改版)

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新潮文庫
千羽鶴 (改版)

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  • サイズ 文庫判/ページ数 327p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784101001234
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

出版社内容情報

父の女と。女の娘と――。背徳と愛欲の関係を志野茶碗の美に重ねた、川端文学の極致。

鎌倉円覚寺の茶会で、今は亡き情人の面影をとどめるその息子、菊治と出会った太田夫人は、お互いに誘惑したとも抵抗したとも覚えはなしに夜を共にする……。志野茶碗がよびおこす感触と幻想を地模様に、一種の背徳の世界を扱いつつ、人間の愛欲の世界と名器の世界、そして死の世界とが微妙に重なりあう美の絶対境を現出した名作である。他に「波千鳥」(続千羽鶴)を収録する。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

353
5つの短篇+続編(3つの短篇)からなる連作小説。個々の短篇の完成度と自立度は高いが、今となっては、やはり長編として読みたい。読んでいる間に何度か『源氏物語』を連想した。それは、この小説に登場する男性は菊治1人だけ(俤としての父親は存在し、物語に影を落とすが)であり、彼をめぐる4人の女性たちが物語を紡いでいくという構成をとるからである。篇中でもっとも存在感を主張するのはちか子だ。そして、儚さの表象は文子だろうか。川端の小説にしては淡々と語られており、濃密な気配はそこにはない。表現は彩やかではあるのだが。2015/09/22

ミカママ

320
茶道の心得のないわたしにも、この物語の中核は「茶道、そしてそのお道具にある」と感じたが、どうやら川端は、戦後茶道をはじめとする日本文化俗悪化へ、警告を鳴らしたかったらしい。真の主人公は、栗本ちか子なんだろう。一見主人公らしき菊治、なんだコイツは。モテモテのヤリ◯ンではないか。彼と父、太田夫人とその娘のクロスオーバー親子丼。思わず【エロ部】部活の冠をつけたかったが、彼の美しい文章に免じて、今回は許しちゃる(笑)2018/03/13

青蓮

113
主人公の菊治と彼の亡き父の愛人太田夫人の間に流れる背徳的な官能。2人の情交はこの手に女の柔らかな素肌としっとりとした体温を感じるよう。太田夫人の娘の文子、菊治の縁談相手のゆき子、お茶の師匠であるちか子、複雑な人間模様と愛憎が綾なす物語は麗しい錦絵だ。そしてお互いの顔を合わせて無限に続く鏡のようでもある。ちか子は何だか随分嫌な人間として描かれているように感じたけれど、美しく儚い2人の令嬢と感じやすい太田夫人との中にあって非常に人間味があって面白い。盗難に遭って続編の「波千鳥」は未完のままなのが惜しい。2019/03/11

アキ

103
源宗宇「常盤なる松のみどりも春くれば今ひとしほの色まさりけり」古今集。菊治の父が好んでいたとちか子が言ったが、この句の清々しさから稲村令嬢を思い出す。父の愛人と関係を持ったこととその人が直後に自死したことで、罪の意識を持ち、更にその娘・文子にまで去られ、悔恨に苛まれる。令嬢の桃色の縮緬に白い千羽鶴の風呂敷が、夕焼けに飛ぶほどに忘れられず、「波千鳥」で終に彼女と結ばれたとしても、抱擁から先に進むことができない。柿本人麻呂「淡海の海夕波千鳥汝が鳴けばこころもしのに古へ思はゆ」万葉集。古歌も古茶碗も彩を添える。2022/01/11

あつひめ

102
虚飾を捨て去りそこに残る清らかな美しさが侘びさび。茶道という背筋のすっと伸びるような世界の上で交わされる生々しい振舞い。女たちは五角形に相対する位置にあり、その中を男がコロコロ転がるようだ。今でも、充分ドラマ化したら視聴率もとれそうな。儚い想いと茶器に染み付いている長年の思慕。それぞれのキャラの持ち味が随所で効いていて、いつの間にか先が気になるほど引き込まれてしまった。イヤー、ちか子のような女、怖いなあ。はっきりと拒否しても自分のいいように解釈する。最後まで生き残るのは図太い精神力か。2014/02/24

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