出版社内容情報
世界遺産登録の舞台裏
本書は、ユネスコ日本政府代表部全権大使を務めるなど長く世界遺産にかかわってきた著者が、世界遺産登録に至るまでのさまざまなハードルや駆け引き、そこから生じる問題点を明らかにする。鎌倉は優れた遺産を持ちながらなぜ登録されなかったのか。法隆寺登録の際に、石造りの文化財を価値基準とする西洋的文化観に固まったイコモスの専門家たちと繰り広げた大論争、一時は危なかった和食の無形文化遺産登録を成功させた作戦とは……など、世界遺産外交の最前線に立ってきた著者ならではの興味深いエピソードがつづられる。
登録されると多くの観光客が訪れ、その大きな経済効果から世界遺産は今や世界規模の巨大なビジネスになっている。そのため、人類共通の貴重な自然や文化遺産を守るという本来の理念とは別な次元の問題が生じている。限られた枠の中での登録の駆け引き、そのためのユネスコ内部でのロビー活動、諮問機関のイコモスの評価を無視した形の逆転登録などが日常化しているのだ。さらに、アラブ諸国とイスラエルの対立や、『明治日本の産業革命遺産』登録に際して大きな問題となった韓国の反対行動にも言及し、世界遺産に介入する政治問題に警鐘を鳴らす。
【編集担当からのおすすめ情報】
候補地が世界遺産に登録されると大きなニュースになり、日本中が沸き立ちます。一方で、世界遺産にまつわる疑問も多いと思います。富士山は自然遺産ではなく、なぜ文化遺産なの? 三保の松原はなぜ、当初は世界遺産から除外されそうになったの? 鎌倉はなぜ登録されなかったの? 平泉もなぜ最初は登録できなかったの?…… 本書はそんな「なぜ?」に、著者が登録システムの実情とともにわかりやすく答えます。また、ユネスコや諮問機関のイコモスが抱えている諸問題にも触れています。観光客誘致の効果ばかりが注目され、世界遺産の本来の理念がかすんでしまっているのではないか、という著者の思いからです。いま登録されている世界遺産は、どれも本当に素晴らしいものだと著者は言います。本書で登録までの様々な経緯を知り、世界遺産の素晴らしさを改めて認識していただければ幸いです。
木曽 功[キソ イサオ]
著・文・その他
内容説明
世界遺産はその大きな観光効果から、今や世界規模の巨大ビジネスになっている。各国は限られた枠の中で自国の候補を登録させるべく、本来の理念とはかけ離れた駆け引きを繰り広げている。本書は、元ユネスコ日本政府代表部特命全権大使の著者が、登録競争の実態や、ユネスコと諮問機関のイコモスが抱える問題点を明らかにする。また、『明治日本の産業革命遺産』登録過程での韓国の反対行動の経緯にも触れ、世界遺産に介入する政治問題に警鐘を鳴らす。
目次
第1章 知っているようで知らない世界遺産(世界遺産のうぶ声;文化遺産と自然遺産 ほか)
第2章 世界遺産の経済効果(ブランド化する世界遺産;各国が力を注ぐ巨大観光産業 ほか)
第3章 登録決定プロセスとその問題点(登録までの4つのハードル;専門家による勧告を踏まえて委員会で決定 ほか)
第4章 石の文化と木の文化―イコモスの問題点(審査におけるヨーロッパ中心主義;浄土思想のストーリーを理解できたか? ほか)
第5章 進化する世界遺産(注目を集めた『明治日本の産業革命遺産』;正攻法で対応 ほか)
著者等紹介
木曽功[キソイサオ]
1952年広島県尾道市生まれ。東京大学法学部卒。76年文部省(現・文部科学省)入省。79年、イェール大学にてMBA取得。文化庁文化財部長、文部科学省国際統括官などを経て、2010年に国連教育科学文化機関(ユネスコ)の日本政府代表部特命全権大使に就任。14年4月より第2次安倍内閣の内閣官房参与(ユネスコの文化関係施策担当)を務める。文化庁、文部科学省時代から日本の世界遺産登録に尽力し、ユネスコの世界遺産事業に長くかかわってきた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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