さくら

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  • サイズ B6判/ページ数 380p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784093861472
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

出版社内容情報

スーパースターのような存在だった兄は、ある事故に巻き込まれ、自殺した。誰もが振り向く超美形の妹は、兄の死後、内に籠もった。母も過食と飲酒に溺れた。僕も実家を離れ東京の大学に入った。あとは、見つけてきたときに尻尾に桜の花びらをつけていたことから「サクラ」となづけられた年老いた犬が一匹だけ――。そんな一家の灯火が消えてしまいそうな、ある年の暮れのこと。僕は、何かに衝き動かされるように、年末年始を一緒に過ごしたいとせがむ恋人を置き去りにして、実家に帰った。「年末、家に帰ります。おとうさん」。僕の手には、スーパーのチラシの裏の余白に微弱な筆圧で書かれた家出した父からの手紙が握られていた――。

西 加奈子[ニシ カナコ]
著・文・その他

著者等紹介

西加奈子[ニシカナコ]
77年5月、イラン・テヘラン市生まれの大阪育ち。関西大学法学部卒業。04年『あおい』でデビュー
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

みも

213
往々にして我が家の普通は、他家の非常識だったりする。そもそも完璧な普通の家族など存在するのか。これは極端に戯画化した奇天烈な家族の物語。その多幸感からの瓦解…そして再生への光明…家族愛と恋情と性と死と…渾然一体となる美麗と汚物と純粋と醜悪…言わば寓意に託した生身の人間劇。鬱積の飽和状態の中で、廃人になる瀬戸際でなんとか踏みとどまる家族を繋ぎとめた、愛犬サクラの健気な存在が救い。ただ僕は、突如襲った自分自身の嗚咽を、これは感動なのかと訝しがりながら、消化し切れず困惑する。比喩の特異さと独創的感性が瑞々しい。2020/09/12

美登利

111
第1章から喪失の物語だという事が分かります。それも誰もが羨むように仲の良い家族のもので。その傍に愛犬サクラの存在が愛の溢れる平和な家庭の中に、兄弟たち個々の生活の中にも寄り添う。子供が成長する過程は決して楽しい事ばかりでは無く、苦しい事もあってそれはどの家族にも訪れる当たり前の事なんだよと改めて思わされる物語。他の人は美しいとか勉強が凄くできるとか、自分は不幸ばかりで楽しいことなんてこれっぽっちしかなくても、やはり生きていなくては味わえないものが確かにこの世にはまだあるんだ!と私は感じました。2017/09/05

Lara

105
いやはや、なんとも不思議な体験でした。とても仲の良い、兄、弟、妹3人の子供時代から、成人の頃までの日常をあけすけに綴ったお話。そして、仲の良い両親もあからさまに語る。そのあまりに、赤裸々に語られる日々の出来事の内容に、驚きの連続だった。2021/03/27

itica

77
両親と子供3人+犬(さくら)の仲良し家族は何処にでもいるような、けれど何処にもいない唯一無二の家族。沢山の幸せと、のちに訪れる沢山の不幸な出来事をずっと見守り続けたさくらを中心に、家族の再生までの物語。生きるってことは、生きてるってことは全く持ってサバイバルのようだ。西さんの描く家族はどうしてこうもユニークで魅力にあふれ切なさを帯び私を虜にするのだろう。まいったなぁ。 2015/08/07

Tsuyoshi

72
犬のサクラと個性的なキャラなの長谷川家の20年を描いた作品。家族仲がよく、太陽のように明るかった家庭において、長男の事故を起点に不幸が重なり、離散の危機を迎えつつも最期に持ち直していく話だった。特に兄を溺愛するあまり、他人へ心を許せなかった末娘ミキの「今度好きな人ができたらちゃんとスキという!」の件には胸が熱くなった。人生は有限であり、今ある幸せに素直に向き合いたくなる作品でした。2017/12/13

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