出版社内容情報
敗戦の焦土から立ち上がれ。混沌の時代を生き抜いた男たちの、反骨と絆の物語。
太平洋戦争に敗れ、大陸からの引揚船で、中学生の阪上群青は母とはぐれ、直後に何かが海に落下する音を聞いた。
その場に居合わせたのは、赤城壮一郎という男。さらに謎の男が現れ、「赤城が君の母親を突き落とした」と告げられる。
母の失踪に赤城が関係しているのか。疑惑がぬぐえないまま、行く当てのない群青は、赤城と共に焼野原を生きることに。
戦後の混乱期、上野の闇市で商売をするうちに、人々が衣食の次に必要なのは「清潔」だと気づき、二人は仲間たちと石鹸会社を立ち上げた。
ともに困難に立ち向かう日々の中、群青にとって赤城がかけがえのない存在となっていく。
だがそんな時、引揚船の男が再び現れ、衝撃の事実を群青に伝えた。
果たして二人の行きつく未来は……。
内容説明
大陸からの引揚船の上でただひとりの肉親である母が失踪した。身寄りをなくした少年・群青は謎の男・赤城とともに石鹸製造会社を立ち上げる。だが群青の心には、母の失踪に赤城が関与しているという疑念が渦巻いていた―。著者が新たに切り拓く渾身の一作!!混沌の時代を生き抜いた男たちの、反骨と絆の物語。太平洋戦争に敗れ、瓦礫から這い上がった少年は、その瞳にどんな未来を映すのか―。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
海の仙人
31
初読みの作家さん。敗戦後、群青は大陸京城からの引揚船で母とはぐれ、直後に何かが海に落下する音を聞く。居合わせた赤城は母の失踪に関わっているのか。疑念を抱きながら生きるために赤城と暮らす群青だが…。全ての過去が明らかになり、未来に踏み出す群青の前途を願わずにはいられない。続編が楽しみ。お薦めです。2022/04/02
よっち
30
太平洋戦争敗戦後、大陸からの引揚船で母とはぐれて、直後に何かが海に落下する音を聞いた中学生・阪上群青。その場に居合わせた赤城壮一郎と共に生きてゆく物語。謎の男に「赤城が君の母親を突き落とした」と告げられて、疑惑がぬぐえないまま行く当てもなく、赤城と共に焼野原を生きる群青。近江兄妹と出会った二人が石鹸会社を立ち上げて共に困難に立ち向かう中で育まれたかけがえのない絆があって、明らかになった衝撃の過去、見守ってくれた赤城への複雑な思いも抱きながら、自ら決めた道を進む群青のこれからをまた読んでみたいと思いました。2022/02/04
ときわ
10
「焼け野原の東京、上野の地下道の浮浪児、闇市」から、半村良さんの『晴れた空』が思い浮かんだ。当時の人の生きていく熱いエネルギーが伝わってきた。そこに石鹸工場の行方と、群青の母の死のミステリーが加わり、先の展開が気になってページをめくる手が止まらない。《朝は必ずしも希望などではない。今日をどうやって食いつなぐか。それだけをかんがえて、一日一日どうにかやってきた》明けない夜はない、は聞いたことがあるけれど、明けた一日を生きていかなければいけない、を心に留めておこう。2022/06/01
さとみん
9
最後の一文を読み終えた後「"暁闇編"ということは続きがあるんだよね!?」と興奮して誰かを問い詰めたくなった。話が中途半端なわけじゃない。さらに個人的にはこの終わり方はものすごく好きなんだけど、でも続きあるでしょ!!!と矛盾する思いを抱えてジタバタしている。まだあの子の夜明けが来ていないし、彼らの今後も気になって仕方ない。2022/05/04
カーンズ
9
初読み作家さん。 いわゆる引き揚げ系の話だが暗さより明るさ要素が多く、生きる希望を見つける逞しさがあるストーリーだった。上手く行き過ぎな面もあったが築かれた絆が頼もしい。2022/03/12