出版社内容情報
どうやら自分たち夫婦には子供が出来そうにないと感じ始めた夫婦、実の父に会いに行く女子高生、母の急逝を機に実家暮らしを再開した息子…。人生が愛おしくなる、笑いと涙がつまった平成の家族小説。
内容説明
どうやら自分たち夫婦には子どもが出来そうにない(『虫歯とピアニスト』)。同期との昇進レースに敗れ、53歳にして気分は隠居である(『正雄の秋』)。16歳になったのを機に、初めて実の父親に会いにいく(『アンナの十二月』)。母が急逝。憔悴した父のため実家暮らしを再開するが(『手紙に乗せて』)。産休中なのに、隣の謎めいた夫婦が気になって仕方がない(『妊婦と隣人』)。妻が今度は市議会議員選挙に立候補すると言い出して(『妻と選挙』)。どこにでもいる普通の家族の、ささやかで愛おしい物語6編。
著者等紹介
奥田英朗[オクダヒデオ]
1959年岐阜県生まれ。雑誌編集者、プランナー、コピーライターを経て、1997年『ウランバーナの森』で作家デビュー。2002年『邪魔』で大藪春彦賞、2004年『空中ブランコ』で直木賞、2007年『家日和』で柴田錬三郎賞、2009年『オリンピックの身代金』で吉川英治文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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1 ~ 5件/全5件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
745
6つの短篇を収録。いずれも初出は「小説すばる」。掲載誌の性格からも、心持ち文芸寄りのエンターテインメント小説といったところか。主人公もシチュエーションも様々だが、「正雄の秋」と「手紙に乗せて」はサラリーマンの世界を描く。つくづく上手いなあと思う。この作家はサラリーマンの経験はなさそうなのに(実は私もないのだが)、会社の持つ独特の「感じ」といったものを実によく伝えているように思う。畢竟は想像力と筆力に帰するのだろう。「虫歯とピアニスト」の女性(敦美)の心の弾みの表現もいい。2023/02/06
starbro
728
奥田英朗は結構読んでいますが、平成の家族小説シリーズは初読です。少なからず問題・ヒミツを抱える家族ですが、いずれも温かな良いファミリー・夫婦のオンパレードです。オススメは「妻と選挙」です。思わず涙ぐみました(泣)時間をみつけて他のシリーズも読んでみたいと思います。2015/11/07
Yunemo
661
3作目の家族小説、何気ない日常の家族生活であり、ありふれた生活の一部のはずなのに、胸にコツンと響くんですよ。夫婦間で、親と子供たちの間で、何らかのきっかけで、思いやりの会話があり対話があるから、なんでしょうか。ただ妊婦の章はいけません、この話題の中にちょっとそぐわない感。手紙に乗せてで「若いって、他人事が多い・・・」という表現、裏返せば「自分ごと」となるまでの経験値、ここでの命題はそうかも、でもちょっと違った解釈もできるのかな。ここのところ、「自分ごと化」とは、なんてことをいろんな状況で考えさせられます。2015/09/23
yoshida
618
シリーズ三作目。家族にまつわる短編六編。安定した面白さがあります。印象に残ったのは「正雄の秋」、「アンナの十二月」、「手紙に乗せて」。「正雄の秋」での出世争いに敗れた正雄への、妻の心配りが心に残る。「アンナの十二月」での実の父に傾倒しながらも、友人達の後押しもあり、しっかりと育ての父の許に戻るアンナの姿が良かった。「手紙に乗せて」は喪失を経験した者同士だからこそ、分かりあえる事が描かれている。共通して言えるのは、どの家族もお互いを思いやれていること。離婚した私は、こんな家庭もあるんだなと思ったりしました。2017/02/18
kyon
407
読み易いし、面白い!かと言って現実離れしていない。その辺にありそうな話しなので、感情移入もしやすいし〜、なんでこんな風に自然に書けるのか不思議。ジーンとくるお話しもあり、一気に読んでしまいました。2016/02/20