内容説明
伊達藩士・斉藤小兵太寅吉は恋人を捨て、冒険を求めて、支倉常長遣欧使節に加わった。着いたイスパニアはすでに全盛期の栄光を失っていたが、一人のイタルゴ(戦士)と意気投合し、共に戦場に赴くために、帰国する使節団と訣別する決心をする。壮大なスケール、波瀾万丈の歴史ロマン。第6回小説すばる新人賞受賞作に大幅加筆、600枚の長編となったロング・バージョン。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ehirano1
77
かの(謎多き)支倉使節団が題材となるだけで興味がそそるのに、そこに船戸与一的要素と逢坂剛の要素を漂わせながら独自の物語は圧巻でした。「ジャガーになった男」よりも「ジャガーになった漢」でもむしろよかったのではないかと思うくらいでした。2022/05/14
ehirano1
72
「いいぞ、フランス人。戦争の可否などは王侯の心配事さ。俺たちの関わり知るところじゃねぇ。メリンダへの土産話を減らされてたまるものかい(p180)」。ここでは、中世の戦争にも男たちの浪漫があったことが言及されていました。国家間の揉め事も人の命を賭ける戦争ではなくスポーツに転換できていればどんなに良いかと夢想しました。2022/12/06
ehirano1
70
「化け物と同じで目に見えないものはどんどん大きく膨らむものなのだ(p78)」。しかも、勝手に膨らみますから質が悪いです。しかも、頼まれもしないのにせっせと膨らませているのはなんと「己の心」ってのが何ともです・・・。2024/01/12
ehirano1
58
「それなりに満ちている。ただ働いて、ただ疲れて、面白い事など一つもないが心の平和だけは手に入りそうだった(p75)」。①究極の選択と取るべきか、②物事の代償性と取るべきか、③そうではないと取るべきか、いろいろと考え込んでしまいます。まあ③になる(=想いたい)んですけどね。2023/07/08
Dai(ダイ)
19
傭兵ピエールに続き、2作目。どちらも西洋歴史小説であり、豪快な武人、女好きという共通の主人公の物語である。本作は歴史小説よりも伝奇小説に近くより荒唐無稽であるが、そのために軽い気持ちで読め楽しめた。日本刀を手に海外で暴れまわる様は心踊るものである。寡黙な著者であるが他に気になる作品もあり、機会があれば読んでみたい。2015/06/04