出版社内容情報
必死に足掻いて生き続けるのさ。この国の政がどうあろうともーー。
時は平安末期ーー。宮廷を覆う不穏な影。
猛き者たちの世へ時代が移ろう中で、滅びゆくものと、生き続けるもの。
直木賞受賞作家がつむぐ、至高の短編集。
「武者の世の訪れを告げる都。権力者に翻弄されつつ必死に生きる中・下層の人々を活写した、濃密で情感あふれる歴史物語」(創価大学教授/NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」時代考証 坂井孝一)
内容説明
必死に足掻いて生き続けるのさ。たとえこの国の政がどうあろうとも―。本年度大河ドラマの前史を物語る必読の一冊。
著者等紹介
澤田瞳子[サワダトウコ]
1977年京都府生まれ。同志社大学文学部文化史学専攻卒業、同大学院博士前期課程修了。2011年、デビュー作『孤鷹の天』で第17回中山義秀文学賞を受賞。13年『満つる月の如し 仏師・定朝』で本屋が選ぶ時代小説大賞2012ならびに第32回新田次郎文学賞受賞。16年『若冲』で第9回親鸞賞受賞。20年『駆け入りの寺』で第14回舟橋聖一文学賞受賞。21年『星落ちて、なお』で第165回直木賞受賞。著作多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
206
澤田 瞳子は、新作中心に読んでいる作家です。平安末期、平家全盛期の渋めの連作短編集、オススメは「白夢」です。 https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=00003609222022/03/24
とん大西
122
上皇と天皇の政争に武士の台頭。京の都は典雅と表裏一体の荒廃。平安末期というのは、想像以上に混沌としてて世も末の有り様だったのかもしれません。若き僧坊や医師、宮中の女房。後白河院や平清盛がスポットライトを浴びる中、名もなきバイプレーヤーたちの日々、そして刹那。朝廷の人物相関がややこしくて若干の読み辛さはあるものの市井の息遣いを感じられる渋い短編5話。『白夢』は諦念と執念のコントラストが特徴的です。2022/05/01
のぶ
115
平安時代後期を舞台にした短編集。それぞれの物語は独立していて作品ごとの関連はない。ただ、どこか共通しているのは、武士の台頭を告げる都で、政をつかさどる天皇、上皇やその周辺の人たちを中心に描いた様々な話だった。今回の澤田さんの作品は登場人物も多く、自分にはやや難しかったが、丁寧で美しい筆致で、高貴な人たちや中、下層の人たちを映し出したそれらは、その時代を見事に伝えていて、あたかも自分が平安の時代に連れていかれたような印象を受けた。長さの割には読むのに時間がかかったが、読んで損のない一冊だと思う。2022/03/11
モルク
109
平安時代末期、平、源氏ら武士が台頭してきた時代を舞台とした5話の短編集。上皇や天皇そしてそれに取り入ろうとする公家などが権力争いをするなかで翻弄されながら生きた中流下層の人々を描く。最後は今後の武家社会を予見させる形で終わる。「影法師」には鎌倉殿…の文覚が登場し、こんなところでの再会。宮中の女医目線の「白夢」が好き。どの話も「やられたー」と思わせる。やっぱりうまい!2022/11/03
タイ子
85
澤田さんは歴史に埋もれた裏の歴史、いや人物をスポットライトに当てるのが本当に上手い。おかげで読者としては一つも二つも歴史を楽しむことが出来る。本作は平安時代末期、これから源平合戦が始まり大河ドラマの時代がやってくる少し前のお話。5つの連作短編集。何が原因であの歴史に残るような事が起こったのかとか、清盛が荒れる朝廷を見事な采配でまとめてくれるとか、裏で支える女房たちの賢さと生き様が知らなかったこの時代を教えてくれて面白い。今の時代に通じる人間の絆、本性が見えてきて尚楽しめる。2023/03/15