内容説明
医師が殺された。被害者は三年前に起きた強姦事件の加害者の一人。殺された医師が拷問とも思える傷を受けていたことが分かり、捜査一課の陽山承と真壁剛は、解剖医である楠衣春の協力を得ながら事件の真相を追う…。
著者等紹介
北里紗月[キタザトサツキ]
1977年埼玉県生まれ、千葉県育ち。東邦大学大学院理学研究科生物学専攻修了。理学修士。日本卵子学会認定胚培養士。体外受精コーディネーター。『さようなら、お母さん』が島田荘司選第9回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞優秀作となり、2017年にデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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いつでも母さん
153
『愛が人を狂わせる。』からの医師の倫理を問う解剖学ミステリーと来たら、ゾクゾクしてページを捲るしかないよね。嫌悪感たっぷり残して重い読後。捜一の刑事・陽山承が頼りなくて(汗)だから先輩でもある解剖医・楠衣春の前のめりの言動と、丁度いいのかもしれないなぁ…なんて終始した。事件そのもの犯人捜しは全然ハズレの私だが、そこに至るまでの病院や医師の現状に啞然、呆然。こんなのは小説の中だけですよね?2023/02/17
ちょろこ
132
反吐が出る、涙も出る一冊。医師が拷問のようにいたぶられ殺された。警察+解剖医の協力、強力タッグでこの事件の真相を炙り出すミステリ。ひねりの効いた複雑な真相は読み応えあり。しかも、意外な展開も盛り込んでますます複雑化され犯人も全く見えず、最後まで良い意味で引き摺り回される感覚が面白かった。でもその面白さに相反するかのように沈殿していくのは事件の根っこへの涙と嫌悪感。"見ざる 聞かざる 言わざる"な組織体制に反吐が出る。怖さも出る。それにしても感情的な刑事だったな。彼にはたしかにブレーキ役の彼女が不可欠かな。2022/04/13
nobby
132
「大丈夫」藁にもすがる思いの重篤な患者や家族にすれば光明を見出す医者の言葉…それを逆手に取り「もう何をしても同じだから」「治ろうが治るまいが」と便利使いで粗雑な手術を繰り返すとは、その傲慢さ何とやるせなく傍観にまた憤り止まらず…さらに、ただの藪医者と開き直れば司法の手も届かないとは…生々しく痛々しい解剖の結果、拷問にしては違和感だらけという不審が導く展開に惹き込まれるも、行き着いた真相に無言で塞ぎ込むばかり…解剖医のはっちゃけキャラが魅力である故にマジ怒りモードがピンと来ないのと刑事の頼りなさが難点(笑)2022/01/19
茜
121
北里紗月先生の書く医療ミステリーは新しい知見を授けてくれるので好きです。一風変わった解剖医である楠衣春がまた魅力的で読んでいて全然飽きない。それに対して刑事の陽山承が私には情けなくて情けなくて。。。。よく刑事になれたもんだと思っちゃいましたw楠衣春がいなかったら事件は解決したのか怪しいくらいです。利根川由紀シリーズとともに楠衣春もシリーズになると楽しみが増えそうです。読後として藪医者には当たりたくないなぁとつくづく思いました。2021/12/24
さっこ
65
過去の強姦事件の加害者でもあった一人の医師が殺された。法医学教室の楠衣春とともに捜査一課の津山と真壁が事件を追っている中、もう一人医師が殺された。家族が病魔に侵されている間、医師にすがるしかない家族たちの思い。家族の理不尽な死を目の当たりにしたとき心に狂気が灯る。衣春のキャラが良き。続編出るかな~。それにしてもあの手術実績でどうにも手を打たないあの病院の危機管理能力の無さに呆れる。2022/09/04