講談社文庫<br> 軽いめまい

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講談社文庫
軽いめまい

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  • サイズ 文庫判/ページ数 200p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784062733762
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

内容説明

郊外の住宅地にある築七年の中古マンションで、夏実は夫と小三と幼稚園児二人の息子と暮らしている。専業主婦の暮らしに何といって不満もなく、不自由があるわけでもない。けれど蛇口から流れる水を眺めているときなどに覚える、放心に似ためまい。生活という日常を瑞々しく、シニカルに描いた傑作長編小説。

著者等紹介

金井美恵子[カナイミエコ]
1947年群馬県生まれ。群馬県立高崎女子高校卒。’67年「愛の生活」が太宰治賞次席、’68年現代詩手帖賞受賞。’79年「プラトン的恋愛」で泉鏡花文学賞、’88年「タマや」で女流文学賞を受賞
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

86
自ら「ドラマティックなことに興味を持てない作家」と語る金井美恵子の、文字通りに非ドラマティックな小説なのだが、それでも登場人物がいて時間が生起する限りは、やはりそれ相応のドラマはあるもので、それが主人公であり語り手でもある夏実の淡々としつつ、いつもながらの切れ目のない文体で語られる。作中で、世田谷美術館で開かれた「ラヴ・ユー・トーキョー」写真展への言及があるが、この小説は夏実の体験する「トーキョー」を描いてもいるのであって、そこに専業主婦として暮らすことの、まさに不条理の一歩手前の状態が描かれたのだろう。2013/11/21

ちぇけら

20
なんでもない日のなんでもない夜に、わあっと泣き叫びそうになるでもなく、なんとなく居心地が悪い気になって、幸福というのはほんの一瞬のうちに終わってしまうものだということは経験から知っているのだけれども、今日は絶対に着けるからさあ、ちょっと休憩していこうぜ、という馬鹿な男の台詞を何故か毎回信じてしまうみたいに、それが唯一の希望という訳でもないのに永遠に続くかもしれないと思ってしまうのだが、それはこのうえなく退屈で、身体に残った最後の水滴が涙として流れて挙句化石になってしまいそうだと思ってめまいがするのである。2020/09/17

きさき

17
★★★☆☆:半分だけ読了。Stream of consciousness.するする流れていく、語り。内容はリアルで、生活感があって、面白かったけど、文体が読みにくかった。この作者のほかの作品を読んでみたいな。2019/10/19

あ げ こ

14
夏実の放心やめまい、〈光線の具合ではキラキラと輝きながらうねる透明な紐の束のように〉蛇口から流れ落ちる水を、〈何の不思議もなく水が流れおちる〉のをただ眺めて放心すること、或いは遠景のまぶしさと目蓋の裏に焼き付いたオレンジ色の後、妙に生々しく映る近景の更に細部の落ちた髪の毛であるとか、そこに映る人たちが、母親を除き〈もう誰もここに今生きてはいないのだと〉写真を見て考えるときの、感傷とは無関係の不思議な気持ちやら、写真との距離の量り方、〈白地に赤い小さな水玉の袖無しのワンピース〉の記憶を手がかりにすること…2021/09/17

あ げ こ

13
ああ、よく知っている。本当に、よく知っている。その繰り返し。繰り返しの中の。そのめまい。うんざりするほどに、よく知っている。あまりにも近しい。自分もまたそこで生きていると感じる。そのめまいと吐き気と放心に。自分もまた限りなく近い場所にあると感じる。その多くが、そこにある多くが、自分自身もまた幾度となく経験し、体感し、生きた事のある、この先も幾度となく生きる事になるであろう、瞬間であり、感覚であり、情景。或いは快さであり、不快さであり、快不快でさえない、反復。あまりにも馴染み深く、近しいそれら。無数にある。2020/03/06

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