講談社選書メチエ<br> 「民都」大阪対「帝都」東京―思想としての関西私鉄

講談社選書メチエ
「民都」大阪対「帝都」東京―思想としての関西私鉄

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  • サイズ B6判/ページ数 254p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784062581332
  • NDC分類 686.216
  • Cコード C0321

内容説明

大阪。30年代まで人口、面積、経済すべてに「帝都」を圧した「民衆の都」。ターミナル・デパート、高級住宅地…。私鉄を中心に花開く市民の文化。しかし、昭和天皇の行幸を境に「帝国の秩序」が浸透し、人びとの心は変容する。権力の装置=「国鉄」と関西私鉄との葛藤を通し、「都市の自由」の可能性とその挫折を描く。

目次

第1章 私鉄という文化装置
第2章 「私鉄王国」の黎明
第3章 「阪急文化圏」の成立
第4章 昭和天皇の登場
第5章 阪急クロス問題
第6章 「帝都」としての大阪

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

鉄之助

233
「思想としての関西私鉄」サブタイトルが妙に気になって、読み始めた。東京は天皇のいる皇居を中心とした「官」の帝都。対して、大阪は民都。阪急電鉄・創設者の小林一三が言い出した「民衆の大都会」に由来すると言う。東京が官である国鉄優勢だったのに、大阪は「私鉄の王国」だった歴史が詳しく語られるのが面白かった。その大阪が、次第に官に屈服して「帝都」となる様がよく分かった。昭和天皇が即位する「大礼」に赴くため、京都へ向けたお召列車。百万人以上の臣民が動員され、「一つの国民」意識を演出した装置が鉄道だった、との指摘が出色2021/02/15

HMax

26
関西私鉄王 国の形成と第二次大戦を前に帝国の軍門に下る過程を描く。関西私鉄は規制の厳しい私設鉄道条例を嫌い、僅か3条の軌道法を選んだことが「広軌」と「電車」を手に入れた。「SL」がゆっくりと1時間に4本走る大阪駅のすぐ横を高架の阪急「電車」がスピードを出して1時間に40本も走っていく。煤汚れた大阪駅を、梅田ターミナルビルから見下ろす小林一三。近鉄(大阪電気軌道)のビジョンが「享楽に耽る大阪の労働者を伊勢・橿原・熱田の3神宮に参拝できるようにする」驚き。2020/06/07

mitei

17
普段使っている阪急電車の創業者小林一三って人物に好感が持てた。と同時に今でも小林一三の思想が関西に根づいていることも実感した。2010/10/17

みなみ

12
軌道条例に則って作られた標準軌の関西私鉄は、当初は官の主導によらない独立した存在だった。しかし昭和に入り、天皇主権の国家主義の伸長と期を同じくするように、関西私鉄も官の意向にねじ伏せられていく……といった図式。阪急クロス問題では、一方的に政府の意向を垂れ流す新聞社に酷さを感じるが、当時の世相では仕方ないことか。(現在でも政府の意向を一方的に垂れ流す報道はよくあるのだが)大阪城が戦前に天守閣を作り直したことは知っていたが、こういう流れがあったとは。2021/01/21

茶幸才斎

10
大正から昭和初期に華開いた関西文化圏の進んだ町並みと交通網は、帝都東京を遥かに凌駕していた。その中心には、国鉄など歯牙にもかけず、独自の路線と沿線文化を育む関西私鉄の発展があった。あらためて戦前の日本は豊かな近代国家だったんだなぁと思う。やがてこの私鉄王国も、大陸進出と総力戦にのめり込んで行く昭和という時代に、帝都の精神的影響下に置かれて行く。国家が社会に対し挙国一致を従前以上に要求し始めた時代、関西地域の躍動する独立精神も、国家の巨大な意思には抗し得なかったわけだ。そしてあの焼け野原。なんとも勿体ない。2010/07/08

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