内容説明
「コリアン」とは、どんな人たちなのか?一見容貌が似かよっているがゆえに誤解を深めがちな日本人と在日韓国・朝鮮人のあいだの「透明な壁」を相手に、気鋭のノンフィクションライターが果敢に挑む!私たちのすぐ隣にある「コリアン世界」を、世界的視野で掘り下げた意欲作。大宅壮一ノンフィクション賞・講談社ノンフィクション賞ダブル受賞作品。
目次
プロローグ シークレット・メッセージ
1 コリアンとは誰か(“帰化”―歌手にしきのあきらの場合;焼肉はどこからきたか ほか)
2 コリアン世界の旅(世界で最も危険な街に生きる在米コリアン;サイゴンに帰ってきた韓国兵たち ほか)
3 コリアン 終わりと始まり(金日成は生きている;大震災のあとで―神戸市長田区の人々 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
79
現代の韓流ブームでは考えられない日韓の歴史を丹念に描いている。出自を隠さなければ生きていけなかった時代が確かにあり、それを日本人は忘れてはいけない、という感を強く持った。NHKスペシャルの日本と朝鮮もそうだが、一番近いのに、でも一番知らない「韓国」という国をもっと知るべきであり、「知る」ということは日本人がやってきたことも素直に認める、ことのように思う。 2010/05/16
nnpusnsn1945
52
在日韓国・朝鮮人や在米、在越の韓国人等についてのルポ。読んでいて久々に世界が広がる感じのした本であった。国内外の複雑な問題を単純化した糾弾スタイルではなく、(無論国粋主義でもなく)淡々と(そして深く)述べていく記述である。学校や社会における差別は心の痛くなる箇所である。在日が日本を乗っ取るという話が的外れな事が伺える。本名を出すだけで不利益を被る事例が多かったらしい。ただ、国籍の取得や日本名ないし韓国・朝鮮系の名前にするか、在日であるかを明かすかは個人の事情によるデリケートな問題のようだ。2021/10/14
太田青磁
16
たしかに、日本名で学校生活を送るかぎり、民族差別に晒される恐れは、以前に比べはるかに小さくなっている。それが突如として覆されるのは、就職や結婚、あるいはアパートやマンションを借りるときである・戦争直後、韓国・朝鮮人がいくらかの元手ができるとすぐにパチンコ店経営に乗り出したのは、日銭が確実に入り、その額がほかの廃品回収や焼肉といった職業よりも格段によかったからである・ベトナムで血を流した、その代価をもらったということなんですよ・いろいろしがらみがあっても、在日には基本的に本国がクールに見えているんです2015/06/16
rokubrain
10
「コリアン世界の、旅」であり、「コリアン、世界の旅」でない。 表紙カバーのタイトル文字の並びから誤解してしまった。 旅をするのはコリアンでなく、著者の野村さんであり、 彼のコリアン世界の真相をつかもうとする旅である。 「私はただ、すぐ隣にあるが見えなくされてきた世界に、足を踏み入れただけであった。」 足で稼いだ取材(日本、米、ベトナム)を中心に主題を掘り下げた良書。 戦後、日韓朝の関係が目に見えないところで相対的な関係を持ち続けていたのが良く分かる。2018/04/29
midnightbluesky
8
ありがちな在日=被害者論を振りかざすのではなく、冷静に丁寧に取材しているので、公平な内容。2009/06/11