内容説明
地球上初の原爆実験を行った米国南部の地の一牧童が、対日戦闘機乗員となり撃墜、捕虜となって広島で被爆する。広島には飢えと被差別下の朝鮮人、日系アメリカ人らもいた。加害が被害に、被害が加害ともなる錯綜した現代史の闇部を多くの登場人物と寓話性をおびた独自の構成と文体で描き、原爆体験、現代の「核」に新しい光をあてた画期的長篇。英訳本、BBCラジオ劇(一九九六年)ともなった衝撃作。
感想・レビュー
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河内 タッキー
6
様々な人種が数多く登場する。人種間、また同じ人種同士で差別し、見下す。ある者は差別する側であり、ある時には差別される側になる。それが戦争という状況の中では殺す者、殺される者となる。ホピ族の神話における世界の終り(そして次の世界の始まり)と、原爆投下が重ったその時、そのような差は消え、平等に悲劇がやってくる。ホピ族の予言によると、イデオロギーによって世界を分けない人は、次の世界に生きることができるという。しかし核の無差別性を知ってしまった我々に、果たしてそれはあり得るのだろうか。2016/06/04