内容説明
「ふるさとは遠きにありて思ふものそして悲しくうたふもの」―十八歳頃よりの初期抒情詩集『抒情小曲集』。ドストエフスキーや聖書を読み、都会の中の孤独なる人びと、女への愛をうたう『愛の詩集』。亡き母への想いその他の心象風景『忘春詩集』。詩人犀星の代表的な三詩集の全詩を収め、著者序文、北原白秋、萩原朔太郎、佐藤春夫の推薦文等をも全て収録した文庫版完全詩集。
感想・レビュー
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masa@レビューお休み中
72
少年の頃の犀星は孤独だったのだろうか。書かれた詩には、犀星が見た情景が描かれていることが多い。家族や友人といった人物がでてくるのは、大人になってからである。達観したようにも見えるのは、早熟であったがためなのか。家庭環境によるものなのか。それとも人と交わることを拒絶していたのか…。そこを敢えて知る必要はないのかもしれない。少年期の詩も、青年期の詩も、どちらも孤独感が溢れている。けれども、少年期の詩の方が、より孤独感が強いような気がする。明け方の静寂な湖を見ているような清々しい孤独とでもいえば良いのだろうか。2013/06/10
サラ
1
確かに、これ以上ないほど抒情という言葉が似合う詩人でありました。美しいけれど、寂しさも漂う、不思議な空気感。2015/01/18
yanoms
0
無伴奏の静謐な調べ。「したたり止まぬ日のひかり」というフレーズにハッとする。この孤独な感性、小説よりも詩の人であったのだろう。故郷をこうも美しく描写できるということは羨ましくもあり、哀しくもある。2015/02/20