内容説明
二〇世紀後半、世界の若者の血をたぎらせたサルトルとは何であったか?孤独な文学者から行動する哲学者へ。文学・哲学・評論・政治など、あらゆるジャンルへのエネルギッシュな越境。激動の世紀を、誠実に、知のはるかな旅をつづけた巨人。「世界がまだ若く、不定形であった」戦後という空間を再現しつつ、主要著作を丹念に読み解き、その思想と行動の全貌をとらえる意欲作。
目次
1 サルトルの若さ、時代の若さ
2 政治思想の視座
3 知識人の孤独
4 処女作『嘔吐』
5 混沌のなかの主体性
6 ヨーロッパ二十世紀のサルトル
7 歴史にむかって
8 悪の弁証法
9 戯曲のおもしろさ
著者等紹介
長谷川宏[ハセガワヒロシ]
1940年、島根県生まれ。東京大学文学部卒業後、同大学大学院博士課程修了。専攻は哲学。ヘーゲルの斬新な翻訳により、ドイツ政府よりレッシング翻訳賞を受賞
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感想・レビュー
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うえ
7
「物質が、その存在のたしかさと客観性によって歴史の一貫性をささえる、とサルトルは考える。人間が歴史をつくるというのは正しい。しかし、つくりたいという欲求やつくろうとする意思がそのまま歴史をなすのではない。欲求や意思にもとづく個人の、あるいは集団の、実践が、物質を産出し、修正し、破壊し、再創造していくとき…物質のつらなりが歴史の実体をなす。サルトルはそう考えるのだ。あえていえば、人間の意識や観念は物質の背後におしやられる。歴史に存在の重みをあたえるのは、物質の具現する存在のたしかさと客観性…といいうるのだ」2019/12/03
やいとや
1
サルトルの多彩な業績をそのジャンルごとに検証する、という「入門書」的な本であるのだが、筆者の溢れんばかりのサルトルへの愛がどストレートな「ラヴレター」として機能しているような稀有な一冊。『嘔吐』へのツッコミも『悪魔と神』への賛辞も『弁証法的理性批判』への疑問の投げ掛けも、その全てがサルトルへの愛に立脚している為、「理解出来ない(疑問を抱く)のは自分自身の読み込みの甘さにあるのではないか?」という繊細な不安が大所高所から批判するような傲慢さを纏わぬ好感で全編を包んでいる点が好感が持てる。2019/02/06
もりもり
0
中古で買いましたが、サルトルの考え方がよく分かる本ですね。自分はまだサルトルの本は読んでいないのですが、実存についてもう少し理解を深めたいですね。2013/04/30
発起人
0
「最後の知識人」、サルトルに再挑戦してみようかなと思わせる好著2004/02/12