内容説明
本書は『続日本紀』全四十巻のうち神護景雲三年から延暦十年までの十一巻を収める。平城京は終焉を迎え、都は長岡京へと遷る。皇位継承を巡る政争の中、皇統は天武系から天智系へと交替、時代は新たな転換期に入った。旧仏教勢力の抑制・蝦夷征討など、桓武による平安律令制への歩みはいかに運ばれたか。詔勅から些末な日常に亘る詳細な史録が語る古代史研究に必携の重要史料、待望の最終巻成る。
感想・レビュー
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レアル
32
称徳天皇~桓武天皇辺りまで。この時代で特化する出来事は天武系から天智系に皇位が移行したこと。天武系統がずっと幅を利かせていた時代の終焉とはなんとあっけないものか!と読み終えて思う。とはいえ、やっと呪いのような天武系統継承がとけ本来の皇位継承に戻った時代。皇室側から見た蝦夷の戦いも読み処かな。上・中・下巻含めて数十年ぶりに読み返した。「日本書紀」と違ってなかなか手に取る機会が少ないので、物語を思い出すのに精一杯の「続日本紀」だった。2024/02/26
耳クソ
17
最後までかなり錯乱してた孝謙a.k.a称徳が死に、天武系から天智系に移行することで極端な独裁や粛清がないかわりにあまり山場もなく、井上内親王(+他戸親王)の暗躍と残酷な運命のみが殺伐とした奈良時代の雰囲気を残し、光仁→桓武で終わる。種継は仲麻呂や道鏡と比べ、そこまで独裁していたわけではないが殺され、粛清も廃太子以外はわりと小規模だった。あとは蝦夷への差別と侵略。征夷大将軍・紀古佐美の虚偽報告が印象的。そして訳者あとがきに衝撃を受けた。宇治谷孟さん、本当にありがとうございました。2021/06/10
眉毛ごもら
2
称徳天皇末期から桓武天皇の途中まで。ラストの方とある罪に問われクビとか多いので何あったと思ったが成立時と近く記事にするのを控えたためか?藤原浜成の薨伝がこいつ頭いいけど仕事できねえ(大意)って書いてあってもうちょい書き方あったやろと思うたり。よっぽどだったのか。初読時は記紀と違って無味無臭な気がしていたがこの時代に対する解像度が上がったのかなかなかドラマチックであった。冤罪疑惑で亡くなった井上皇后他戸親王早良親王が下さい死んだあとに桓武帝の身内がバタバタ死んでいくのはなかなか趣があって逃げ出したくなるなと2022/12/06
アル
1
称徳天皇崩御~光仁天皇即位の経緯、「ともに卒した」とだけ書かれる井上内親王(光仁后)と他戸親王(皇太子)の急死など、あえて書かれていない部分が想像できる書き方をしている気がする。 藤原魚名の左遷理由が「あることで罪に触れ」としか書かれていないのは、関係者が存命していることに対する配慮だろうか。 その中でも早良親王については先帝の陵墓へ廃太子の報告をしたこと以外一切記述されていない徹底ぶりは際立っている。『六国史―日本書紀に始まる古代の「正史」』で予習していたとはいえ、その徹底ぶりの異様さが目立つ。2017/08/05
ibaraline
0
上中下まとめて読む。記紀のような物語的な歴史書ではないけれども、95年にわたる様々な記録のなかに当時の人間の生活が読み取れ、平群広成や井上内親王や飯高諸高といったキャラクター(殺されたり反乱したり漂流したり呪詛したりそれぞれ)が登場する。氷上川継の乱や好字二字令といった日本史の授業には出てこないイベントも目白押しである。個人的にはこのあたりの歴史が一番面白いと思う。2017/01/30