内容説明
ヘミングウェイはいう。「アメリカ現代文学はすべてマーク・トウェインの『ハックルベリー・フィン』という一冊の本から出発している。」最もデモクラティックな人間の化身ハック・フィンは、自由と夢を求めては徹底的な試練にあう。しだいに「愛と理解」が困難となって来た今日のアメリカ。現代のハックはそのつど夢を抱き直し、新しい生の実験を重ねている。ハックを通して、アメリカ文化の本質を語る好著。
目次
1 心(アメリカ人の黒いサスペンス;アメリカ文明の闇の奥)
2 アメリカと日本(日本悪者論と日本ブームのアメリカ;「デジタル文化」と伝統;『タイム』のJAPAN特集)
3 性と家族(『ハイト・リポート』とアメリカ文化;「アメリカのイヴ」を求めて;「母娘映画」のうける時代;新しい家族像を模索するアメリカ人)
4 都市と地方(ニューヨークに見るアメリカ人の原体験;東部の都市の活力;アルカトラス島に見るアメリカの天国と地獄;西部の奥地の帝国;新しい遊牧民の文化)
5 自由と秩序(自由の国のもう1つの顔;表現の自由はどこへ;ピューリタン文化のディレンマ)
6 人(現代アメリカ・ヒーローの運命;ハックルベリー・フィンは、いま)
感想・レビュー
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Aminadab
27
著者は比較文学比較文化が専門でアメリカの特に大衆文化に強い。親本は1985年刊。藤原正彦と同じ頃の一冊を読んでみた。人民寺院事件(1978年)やコッポラ「地獄の黙示録」(翌年)などの最新事象をとりあげつつ、思えばアメリカの濫觴ピルグリム植民地も一種のカルト村だった、とか、川沿いに自分探しの旅をする話といえばトウェインの『ハック』だよな、などと過去に遡る。D・H・ロレンス『アメリカ古典文学研究』(1923年)を度々参照。スピルバーグやS・キングが全然評価されていないなど、38年後に読むと今昔の感が深い。2023/07/16