出版社内容情報
【内容紹介】
私が本書の訳に従事したのは30歳代から40歳代の初めにかけてである。80歳をこえた今日までの40年間を通じて、エックハルトは私を鼓舞激励している。たとえば、「神は私よりも私に近く在(いま)す」。人間は幸福を求め、美を求め、宝を求めて遠路を行く。しかし、比類を絶したものはむしろ近くに、あまりにも近くにある。エックハルトの言葉は年とともにますます輝き、新鮮さを加える。(訳者“「学術文庫」のためのあとがき”より抜粋)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
マウリツィウス
18
【エックハルトと御告げ】マイステル・エックハルトは新約聖書時代においてマルキオン批判だけではなく異端源流を創世以前に見出す。つまりそれがギリシャ異教との融和を実質意味し聖書逸脱はむしろ彼の永遠の生命に宿り続ける。神秘化されない哲学動機は旧約聖書における「主への誓願」該当、新約と旧約を束ねたウルガータとの共時役割は異端者の群を告発する。クサヌスなどの異教的誕生をダンテ批判と共に既に実現させた点で彼は古代教会的、更には創世時代と福音書時代に住む説教者とも呼べる。新約聖書と旧約聖書の結ぶ力とは神秘ではなく誓い。2013/06/04
amanon
6
恐らく十数年ぶりの再読。一応愛読書だと自認しており、読み返す度に感銘を受けてきた…と思っていたのだが、今回は「あれ、こんなんだったけ?」と少なからず拍子抜けした感が。あちこちの頁に付箋を貼ったくらいだから、それなりに感じ入りはしたのだけど、でも、以前読んでいた時に覚えたと思い込んでいた鮮烈な印象を受けることがないことに一抹の物足りなさが…ただ、一方でよく言われるように、禅との共通性を理解できたのは、有益だったか。また巻末におけるエックハルトの生涯…特に晩年の異端審問と死後の焚書のエピソードに心が痛む。2022/08/06
KentaroGNH
2
自分を無にして神の元に飛び込めば、神そのものになる。 禅にも通じる無我を説いたエックハルトは異端の告発を受け、弁明に向かう途中で亡くなる。 キリスト教で無を説いた貴重な書
antoinette
2
少しまえにエックハルトのまとめ本は読んでいましたが、その程度の予習ではちと難解でした。中世人のものの考えかたや神学の基本事項をもう少し押さえておけばよかった。それでも、現代日本人の平均的な感覚ではわけわかんねーと思うなかに、ときどきひどくわかりやすい言葉でドキッとすることが書かれています。解説によれば、彼の説教は「道徳を促進する代りに民衆を誤らしめるごとき深遠微妙なる事柄を取扱う」として弾圧されたらしい。成るほど。2012/01/29
Thomas
0
ドイツ精神史はほんとに特異なもので、その一端としての宗教改革を考えるとまた違う意味が見える。2017/08/18