出版社内容情報
【内容紹介】
人間の本性は天が授けたもので、それを”誠”で表し、「誠とは天の道なり、これを誠にするのは人の道なり」という倫理道徳の主眼を、首尾一貫、渾然たる哲学体系にまで高め得た、儒教第一の経典の注釈書。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kawai Hideki
88
孔子の孫の子思が、老子や仏教の流行に対抗して、「天」を起点に儒教を体系づけた、という体裁の理論書(実際の作者は子思ではないらしい)。「中」は偏らないこと、「庸」は不変の定理を意味する。儒教の根本思想である、修己と治人のうち、修己に主眼を置く。解説自体が漢文調だったり、朱子や宇野先生の見解が混ざってきたりと、読むのに骨が折れた。内容は、君臣、父子、夫婦、昆弟、朋友の五達道、知仁勇の三徳や、修己のための学問思弁行など、論語で断片的に出てきていた概念がきれいにフレームワーク化されていて分かりやすかった。2015/07/06
テツ
25
儒教で尊ばれる四書の一つである中庸。ただただ言葉の意味だけで言えば中庸とは「極端ではなく、どちらかに片寄らず中正なこと」という意味だけれど、常に自分の中で全ての偏りについて敏感に感じ取れる力を鍛え続け、社会の動きに寄って自らの立ち位置も微妙に変えていけるような柔軟性(社会が右に寄り過ぎたら左に、左に寄り過ぎたら右に……)を保ち続けることは至難の業だよなあ。それでもここに書かれている内容は全て現代社会においても個人個人が心に留めておかなければならない。現実に個人が社会と対峙するときに忘れてはならない思想。2021/12/06
ビイーン
20
「中庸」は単純な中道とは異なるもので、とても奥が深い。時折、再読したい本に加えたい。2017/03/18
Gokkey
10
現代日本人がイメージする中庸という言葉は、孔子が伝えたかった意味の一部を切り取られた内容に過ぎないのではないか、それが先ず浮かんだ感想。誠という言葉の意味を具現化するための思考とそれに裏打ちされた行動、それは文脈依存的だというように理解した。逆説的に、誠という絶対不変の統一的な価値観などなく、それは対する人や対峙するケースにおいて構成的に作り上げられるモノであり、この行為を実現させる上で必要な考え方が中庸なのだと理解した。2024/05/02
Toshiaki
4
儒教の経典である四書の一つ。本書を読むと、本来の「中庸」とはいわゆる「足して二で割る」ような生易しいものではなく、過不足なく時宜にかなうように徳を発揮するという高度な営みであることがわかる。その中庸を実現するためには学問を通して修練を積み、誠に到達しなければならない。 短いテキストだが非常に奥深く、折に触れて読み返したい。この講談社学術文庫版は注や通解が難解なのだが、解説によると原本は大正時代のものだということで納得した。2018/11/28