内容説明
ヨーロッパ、ビザンツ、イスラムという全く異なる三つの文化が共存し、繁栄を誇った神秘の地中海王国。その実像に迫り、中世史を読み直す。
目次
プロローグ もう一つの中世ヨーロッパ
1章 地中海の万華鏡シチリア―錯綜する歴史
2章 ノルマン人の到来―地中海とノルマン人
3章 王国への道―シチリア伯領からシチリア王国へ
4章 地中海帝国の夢―ロゲリウス二世の新王国
5章 強大な官僚国家へ―ウィレルムス一世悪王と宰相マイオ
6章 動乱から安寧へ―ウィレルムス二世善王の時代
7章 南国の楽園―めずらしい果物の島、美しい建物の町
8章 異文化接触の果実―イスラム、ギリシャ、ラテン文化の出会い
エピローグ 混迷の時代へ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
116
シチリアというとすぐマフィアやアラン・ドロンの「山猫」を思い出してしまいますが、この本では中世のシチリア王国、(南イタリアのつま先まで入っていたのですね)についてかなり面白く書かれています。結構ラテンやアラブ、ギリシャの影響がみられるのですね。これは塩野さんのローマ人の物語(?)でもふれられていたのかもしれません。今まであまり語られることのなかったシチリア王国について興味がわきました。行ってみたい気がします。2015/11/01
俊
24
フランス北部ノルマンディー地方のオートヴィル家が興した国、両シチリア王国についての新書。シチリア王国はラテン・カトリック文化、ギリシャ・東方正教文化、アラブ・イスラム文化と三つの文化を内包した国家。シチリア島の都市パレルモでは、ギリシャ語やアラビア語の書物をラテン語に翻訳するなど、12盛期ルネサンスと言われる文化の興隆が起こった。異教徒云々といったイデオロギーにとらわれず、合理的な理由で異文化との共存を選んだオートヴィル家の君主達は、戦闘だけでなく、政治的センスも持ち合わせていたようだ。 2014/10/02
aisu
17
この本は西ローマ滅亡の頃の、南イタリアとシチリアの説明から始まります。入れ替わる情勢。11世紀にノルマン人が地中海にきた経緯。ノルマンディから来た兄弟の末っ子がシチリア王国の基礎を築き、その息子が王に。世襲制が続く。諸侯がすぐ反乱を起こすから大変だが、まとめながら、一時期は地中海でかなり勢力を伸ばすが…。人名地名がややこしいがこの辺り面白かった。最後にそこで神聖ローマ帝国が出てくるのか⁈となりました。2015/06/20
coolflat
16
シチリア王国の最大の特徴は、ラテン・カトリック(西欧)、ギリシャ・東方正教(ビザンツ)、アラブ・イスラムという三つの政治文化圏の接点に成立し、それぞれの文化的要素を同時に内包していたという点にある。この特徴が12世紀ルネサンスをもたらした。12世紀ルネサンスにおいて重要な位置を占めたのは、スペインとシチリア、北イタリアにおける翻訳活動だ。この地域で、ギリシャ語、アラビア語の哲学者、自然科学書が大量にラテン語に翻訳された。そしてそれを消化吸収した欧州文化は、12世紀から13世紀にかけて飛躍的な発展を遂げる。2017/07/28
組織液
13
オートヴィル朝を中心に西欧史の一部、辺境としてではなく、中世のシチリア王国について語られています。ラテン、ギリシャ、アラブという3つの文化的要素に影響され、文化でも財政行政機構でも多様な様相を呈していました。ただ、このような多文化共生がシチリアの人々の寛容性で支えられていたモノではなく、強力な王権の産物だというのは現実を感じましたね。それでもフリードリヒ2世の人格形成には大きな影響を与えたようですが。王室最高顧問団とかは初耳だったので勉強になりました。2020/09/10