内容説明
キリスト教が心なら、ハプスブルク家は背骨である。ヨーロッパという肉体の中心、結婚政策により勢力を保ち続けた名門王朝の歴史を探る。
目次
序章 ハプスブルクの揺籃期―ルードルフ一世からマクシミリアン帝へ
第1章 マクシミリアン一世―華麗なるブルゴーニュ文化のさなかで
第2章 カール五世とその時代―太陽の没することなき帝国
第3章 ウィーンとマドリッド―ハプスブルクの枢軸
第4章 マリア・テレジア女帝―恵み豊かな治世
第5章 会議は踊る―三月革命の前夜
終章 民族主義の嵐のなかで―ハプスブルク帝国の落日
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
93
ヨーロッパの全領域に及ぶローマ教皇庁と並ぶただひとりの王朝、ハプスブルク家。1273年ルドルフ一世が神聖ローマ帝国の王位に即いて、15世紀後半マクシミリアン一世がブルゴーニュ公国の君主となり、孫のカール五世はスペイン王となる。ハンガリーとボヘミアの王冠も兼ねて、英仏とローマ教皇庁領以外はほぼハプスブルクの支配下になる。歴代の君主たちは芸術に対する理解が深かった。マリア・テレジアが近代化を推し進めるも、1918年フランツ・ヨーゼフ亡き後、ハプスブルク帝国は消失したが、ウィーンとマドリードに芸術は残された。2022/10/30
Y
47
読書において読みやすさばかりが持て囃されることに前から疑問があったけど、この本では読みやすさがかなり効いてた。ハプスブルク家は西洋史の根幹の一部を担ってるってことはなんとなく知ってたけど、ここまでとは思わなかった。これまで蓄積されてきた知識とこの本を読んで得た新しい知識とが新たな一点を結んで西洋史を多角的にとらえることができた気がする。フランツ・ヨーゼフ周辺のことって日本の歌劇でも人気のモチーフだけれど、確かにドラマティックな人ばかりだ。フランツの人生の波乱万丈さについてしばらく考え込んでしまった。2014/02/22
zirou1984
25
700年を誇るハプスブルグ家の中でも、名君と評価されるマクシミリアン一世、カール五世、マリア・テレジア、フランツ・ヨーゼフの4名を中心に取り上げた良書。出版された90年にはカール五世やマリア・テレジアの評伝は決して多くはなかったということで、国母と評される彼女が国家の近代化をいかに成し遂げたかの解説にはかなり力が入っている。帝国の瓦解をひとりくい止めたフランツ・ヨーゼフの晩年には滅びの美学のような哀愁を感じてしまう。オーストラリアを中心とした東欧の歴史についての入門書としておすすめ。2019/03/30
おはち
23
ウィーンに行く前に勉強として…と思ったけどハプスブルク家の650年でウィーンが主役になるのは大分限られてた。歴史についての本はどうしても偏りがうまれてしまうと思っていて(本書の場合ハプスブルク家を好きな著者が書くわけだからハプスブルク家を悪くは描かない)、あまり鵜呑みにしないようにしているけど、一方でその過剰な偏りは著者の「大好き」が詰まった部分なのでそれはそれで面白い。著者のマリア・テレジアへの愛が伝わってきました。2019/11/01
日の光と暁の藍
23
ハプスブルク史はヨーロッパ史だとして、四人の君主を中心に約七世紀を辿るハプスブルク王朝史。ハプスブルク家の始祖とされるルードルフ一世。分裂していたオーストリア諸州を統一させたマクシミリアン一世。ルターを喚問したカール五世。シュレージエンを奪ったプロイセン王フリードリヒ二世とマリア・テレジアの対決は読み応えがあった。カウニッツと共に実現させた「三枚のペチコート」によるフリードリヒ包囲網。ウィーン会議における秘密警察。悲劇の最後の皇帝フランツ・ヨーゼフ。誓約同盟、三十年戦争などなど。実に充実した一冊だった。2015/01/25