内容説明
〈実体(モノ)〉的三項図式にかわり、現相世界を網のように織りなす〈関係(コト)〉的存立構制、その結節としてたち顕れる「私」とは、どのようなものか?量子論からイタリアの戯曲まで、多彩なモデルで素描する、現代哲学の真髄!
目次
事物に「実体」はない(事物の本体を探ると;自然科学の「物体」像;「量子力学」と原子論;物理的「実在」と認識)
認識は「写実」ではない(写像的知覚観の破綻;現象学の雄略と頓挫;現相的世界への定位;観測と実在相の構成)
本質はどう仮現するか(個別存在と普遍概念;本質認知の擬直覚性;意味的本質の存立性;2重の物象化的錯認)
事態は斯様に妥当する(「所与‐所識」と事態;肯定否定と判断対象;人格的主体の如実相;事態の自他への妥当)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
36
「廣松渉」の名が冠されているため、辛うじて読まれていると理解しました。漢字の熟語がやたらと多く、導入部分に「掴み」がありません。それぞれの議論の前提とつながりが分からなければ、何を議論しているのかさえ分からないように、意地悪に文章構成されています。前半が「物」で、後半が「事」で、それを統合する意図なのでしょうが、それを知っている読者でないと、意図を汲み取るのは難しいでしょう。不必要に自然科学の知識が使われているのも、かえって現象学の魅力をそぎ落としています。80年代でこれはないんじゃないかなと思います。2019/10/29
SOHSA
28
《購入本》廣松渉著作初読。やはり日本の哲学者の言説は、西洋のそれに比して解りやすい。本書は哲学入門一歩前と題しながら、その実、読み進めるにつれ、すっかり哲学に浸かっている。解りやすいとは言っても、後半、終盤はかなり難解で咀嚼するのに苦心する。時間をかけて更にゆっくりと味わいたい。2015/10/28
白義
21
30年前に出た本にも関わらず入門一歩前どころか遥かに前を先んじている。素粒子物理学や量子力学などの進展を枕として、物質実体や主観客観の二分を自明視する世界観を解体していく手付きからして、似たような発想だけなら多くの人が出来るだろうが、その緻密さと丁寧な概念整理は他に見ない高度なレベル。実体ではなく「関係」こそを第一におく「コト的世界観」のレベルから、人間がいかに物のない世界に物や客観を錯覚──「物象化」してしまうのかを解き明かした認識論が主で、本格的な存在論は入り口までだがこの時点で並の哲学書はぶっちぎる2018/10/16
非実在の構想
6
入門と謳っているが内容は非常に難しい。常識的な認識のありかた(外的対象ー心的内容ー意識作用)が成り立たないことや、本質が抽象によっては得られないことなど、おぼろげには理解できたが子細はさっぱり。 漢字の宛字のようなルビの振り方や、もはや死語の文語を多用する文体が癖があってよい。 モノからコトへ(実体主義から関係主義へ)という目的意識は共鳴するのでファンになった。2018/08/13
wattann
6
広松渉氏の中では抜群に読みやすい。ほかの論文でもこのくらい噛み砕いて書いてくれたらなあ。それでも後半は難解。一歩前にも立てない自分・・。2011/01/09