内容説明
樋口一葉の『にごりえ』から吉本ばななの『キッチン』まで。日本の近現代文学の名作30篇に描き込まれたさまざまな「食」を通して作品の本質に迫る。作家の嗜好や日本の豊かな食文化に視点を据えて文学をたのしみながら味わいつくす、名作鑑賞入門。
目次
第1章 穀物・豆の文学レシピ(こちそうとしてのライスカレー―村井弦斎『食道楽』;坊っちゃんはなぜ「天麩羅蕎麦」を食べたのか―夏目漱石『坊っちゃん』 ほか)
第2章 魚・肉の文学レシピ(酸っぱい・夫婦という絆の味―上司小剣『鱧の皮』;青魚のみそ煮の仕掛け―森鴎外『雁』 ほか)
第3章 果物・野菜の文学レシピ(「真桑瓜」の重み―正宗白鳥『牛部屋の臭ひ』;先生の愛のゆくえ―有島武郎『一房の葡萄』 ほか)
第4章 おやつの文学レシピ(『にごりえ』と“かすていら”―樋口一葉『にごりえ』;食べられることを拒絶したチョコレート―稲垣足穂『チョコレット』 ほか)
第5章 広義の「食」の文学レシピ(食べることと生きること―正岡子規『仰臥漫録』;芸術としての美食―谷崎潤一郎『美食倶楽部』 ほか)
著者等紹介
大本泉[オオモトイズミ]
仙台白百合女子大学助教授。日本ペンクラブ会員。日本女子大学大学院博士課程修了。正宗白鳥文学を中心にした日本近現代文学が専門
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感想・レビュー
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スノーマン
27
名作を紹介しながらその食文化について語っていく。かなり真面目です(笑)物語には色んなものがあるけれど、だいたい人間が出てくるので、すなわち食べるものも出てくる。食べるものによって作品の背景や、作家の心情なんかまで考えていく小難しい部分はおいておいて、食べ物が美味しそうな物語ってやはり魅力的。日本の物語なら想像つくものが多いけど、海外となるとコレ何だろう?ってものも多い。文や会話から読み取る楽しみもある。映像にはない、読書の楽しみ。2015/02/11
aki
8
なんか既視感すごいなーと思ってたら一回読んだことあった。2015/06/08
アルクシ・ガイ
6
子規がこれほど重病だったとは。「鳴いて血を吐く時鳥」だからホトトギスなのか。2016/08/11
時折
1
"失敗しにくい"といえるほどのおいしい企画なんだと思うのですが、やや文学に寄りすぎていて、食ま鮮烈さは今一つの訴求力だったかな。2010/09/27
紅独歩
0
「食」から文学を読むという試みは楽しい。自分と好物が似ていたり、意外な一面を発見したり……文豪と呼ばれる人々の人生を追体験できる、最も手軽な方法だからだろうか。嵐山光三郎の「文人悪食」「文人暴食」に比べると少々薄味ではあるが。2008/12/26