出版社内容情報
電車、銀座の街頭、デパートの食堂、花鳥草木など、生けるものの世界に俳諧を見出し、人生を見出して、科学と調和させた独自の随筆集。「春六題」「蓑蟲と蜘蛛」「疑問と空想」「凍雨と冬夜」他39篇収録。
内容説明
「このごろはしばらく「世界の夕凪」である。いまにどんな風が吹き出すか、神様以外には誰にも分りそうもない」(「夕凪と夕風」)。初期から晩年まで、季節を主題にした随筆作品を歳時記風に掲載。生きる世界を俳諧に見出し、科学と融合させた独自の短文集。文学的随筆の代表作として著名な「団栗」「竜舌蘭」をはじめ、夏目家の文章会以前の「祭」「車」「窮理日記」「凩」等、全39篇を収録する。
目次
病室の花
春六題
簑虫と蜘蛛
雑記帳より
五月の唯物観
竜舌蘭
やもり物語
花物語
小さな出来事
芝刈
さまよえるユダヤ人の手記より
夏
烏瓜の花と蛾
涼味数題
夕凪と夕風
藤棚の蔭から
疑問と空想
家鴨と猿
物売りの声
海水浴
祭
車
窮理日記
鴫つき
球根
秋の歌
颱風雑俎
凩
団栗
森の絵
病院の夜明けの物音
凍雨と雨氷
藤の実
追憶の冬夜
枯菊の影
年賀状
新年雑俎
相撲
歳時記新註
著者等紹介
寺田寅彦[テラダトラヒコ]
1878~1935年。東京生まれ、高知県で育つ。東京帝国大学物理学科卒業。理学博士。東京帝国大学教授、帝国学士院会員などを歴任。東京帝国大学地震研究所、理化学研究所の研究員としても活躍。物理学者、随筆家、俳人(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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和草(にこぐさ)
13
初寺田寅彦先生。硬い文章ではなく日頃の思ったこと、奥様、子供達のこと等。科学のことももちろん書いてあり、気負わず読了。2021/01/07
ロデタ
8
図書館本。随筆集。だいたい日常の事が書いてあるんだけど、よくそんなネタから話が広がるなと思った。たまに理系ものもあったりしてそれがまた良い。明治後期から昭和初期頃に書かれたものだけどすんなり読める。2022/08/31
ハルト
8
読了:◎ 科学と歳時記の融合。科学者目線での季節の折々を語っている。科学者らしい繊細で深みのある視点は、今読んでも新鮮。自然や行事、自身の体調、科学について。それらを時代の目から、瑞々しく敏感に観察して書かれていて好きだった。折に触れて読みたくなるような随筆集だと思いました。2020/09/09
ポメ子
5
寺田寅彦の理科的エッセイ。 難しくてよく分からないものもあったが、全体的には読みやすかった。特に興味深かったのは、蓑虫に関する記述。幼い頃は冬になると見かけたが、この頃全く見ないので懐かしかった。あとは、チャイコフスキーの音楽を聴いて妄想している文。「秋の歌」という曲を聴いてみたい。2021/06/23
Sakuran
4
科学者の視点での随筆。草花や天候、鳥や虫に関するちょっとした疑問に、仮説を挙げてその検証方法の提案までしているのは科学者ならでは。自然に対する感想は普遍的で共感できる点もあり、100年近く前の時代であることを感じない箇所もあるが、アインシュタインがリアルタイムで活躍していたり、西洋の風習などを取り込むことに反発する個所などはこの時代特有。2020/07/23