内容説明
将軍の首が消えた!尼将軍・政子の深謀とは?『銀漢の賦』『秋月記』『花や散るらん』で時代小説界を席巻した新鋭が挑む、鎌倉幕府最大の謎。
著者等紹介
葉室麟[ハムロリン]
1951年、北九州市小倉生まれ。西南学院大学卒業後、地方紙記者などを経て、2005年、「乾山晩愁」で第29回歴史文学賞を受賞しデビュー。07年『銀漢の賦』で第14回松本清張賞を受賞し絶賛を浴びる。09年『いのちなりけり』が第140回直木賞候補、同年『秋月記』が第141回直木賞候補と第22回山本周五郎賞候補、10年『花や散るらん』が第142回直木賞候補となる。いま最も注目される時代小説作家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ちょろこ
126
行方、行く末の一冊。鎌倉幕府前代未聞、将軍の首が攫われた。この首の行方、鎌倉の行く末はいかに?と謎と展開に惹き込まれるストーリー。公暁が首と共に酒盛りが有名だけれどこの作品はまさにそこから深いドラマが始まったという感じ。こういう一つの史実にスポットを当てて色濃く読ませてくれるのは面白い。入り乱れる鎌倉と京サイドの将軍の座への思惑、駆け引きの腹黒ドラマはもちろん、オムツをしたむつき将軍、鞠子とまた一歩、深く知れたのも良かった。在りし日の実朝の描き方、遺された想いが違和感なく物語に溶け込んでいたのも印象的。2022/09/30
タイ子
104
大河ドラマでもうすぐこのシーンが登場でしょうね。1219年、鶴岡八幡宮にて源実朝が甥の公卿により暗殺される。そして、実朝の首を何者かが持ち逃げ。誰が何のために?と、いうのが作品の本筋となるところ。何せ登場人物が多いので迷子になりながら、そこは葉室麟さんの上手いところで緩急つけながらちゃんと本道に誘ってくれる。虚実織り交ぜながらの歴史物語。実朝亡き後の鎌倉と京を繋ぐために躍起になる幕府。実朝の首をいち早く持ち逃げした弥源太という美少年が本作で最も印象的。こんなストーリーは大河では見られないだろうな。2022/09/13
chantal(シャンタール)
90
右大臣拝賀の式典を終えた実朝が鶴岡八幡宮の石段で、甥である公暁に暗殺される場面から始まるこの物語。次々と話が進んで行き目が離せない!鎌倉幕府をめぐる人々の思惑が複雑に絡み合い、結末が全く読めない!血で血を洗う一族、源家の血筋を絶やそうとする北条のやり口、鎌倉幕府はどうしても暗いイメージだが、尼将軍政子のキリッとした生き方には惚れる。そして生きては登場しない主役の実朝。誰の記憶の中でも頼りな気で温和な姿は当時のドラマの篠田三郎を思い出す。実はそんな実朝の自己を犠牲にした思いが鎌倉幕府を最後まで支えたのかな。2020/07/07
mondo
83
大河ドラマ鎌倉殿の13人を楽しく見ていた折、ちゃま坊さんの本書の感想から読もうと思った。実朝の首は鎌倉ではなく、秦野にあるというのだ。早速、飛びついた。短い通勤の際の読み物として愛読していたが、とても面白かった。大河ドラマの展開と重なっていたこともあるが、登場人物の描かれ方がほぼ同様で、配役をイメージしながら読み進めることができた。先日、実朝と政子の墓がある鎌倉の寿福寺に行ってきたが、うっすらと本書のことが頭をかすめていた。今度、秦野にも行ってみたくなった。ドラマでも描かれていたが、凄い時代だったものだ。2022/12/29
ケイト
79
鶴岡八幡宮で公暁が実朝を殺害、実朝の遺体から首が何者かに奪われる。河内源氏、摂津源氏、信濃源氏、それぞれの思惑が交錯する。ダークサイドに落ちた義時や義村、後鳥羽上皇の権利を振り回すさまも恐ろしい。これが史実と言われても信じてしまう展開は、面白かった。その中でも美少年弥源太の成長譚は良かった。これは大河ドラマではないだろうなぁ。2022/09/25