出版社内容情報
岡品記念病院に赴任してきた研修医の新実一良は「できるだけ何もしない」病院の方針に戸惑う。延命治療、がん検診、禁煙に認知症予防。医療は医者の自己満足なのか?生と死のあり方を問う医療小説!
内容説明
離島の医療を学ぼうと、意気込んで「岡品記念病院」にやってきた研修医の新実一良。ところが先輩医師や看護師たちはどこかやる気がなく、薬の処方は患者の言いなり、患者が求めなければ重症でも治療を施そうともしない。反発心を抱いた一良は在宅医療やがん検診、認知症外来など積極的な医療を取り入れようとするが、さまざまな問題が浮き彫りになっていき―。現代の医療の問題点を通して、生とは何か、死とは何かを問いかける。著者渾身の医療エンターテインメント。
著者等紹介
久坂部羊[クサカベヨウ]
1955年大阪府生まれ。大阪大学医学部卒業。作家・医師。2003年、小説『廃用身』でデビュー。医療分野を中心に執筆を続ける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
212
最近の久坂部さんは心の中の本音の部分を衝いてくるような作品が多い。今作も然りだった。【ほどよい医療】最期の迎え方を考えさせられる。何度も頷きながらいつか来る老親の看取りが頭をよぎった。延命治療があるのなら縮命治療が拡散されるのもありだと私は思う。久坂部さんは日本のあちこちで高齢化率が高いのは『高齢者が不自然に長生きしているからだ』と言い切っている。もうその中に私が入るのも遠くない(汗)岡品記念病院!オカシクなんかない。最期は私もそこへ行きたい。2020/01/17
モルク
157
離島での医療を学ぶため新見は岡品記念病院に2年間の研修にやって来る。この地で患者に寄り添い人間味のある医師になりたいと思っていた。離島そして人口のわりに先進医療の設備もある病院であるが、院長はじめ他の医師たち看護師の意識の違いに戸惑う。ここでは検診もしないし、積極的な検査も治療もせず、患者の希望する方法…死に方を優先する。ことごとく反発し患者に治療を薦める新見だが…死が間近でも延命のため管に繋がれ、積極的な治療が患者を苦しめ死期を早めることもある。人間の最期について最近の作者のテーマがよくわかる。2020/09/03
修一郎
146
周囲の負担はともかくとして自分は認知症になって死ぬのが気楽でいいと思っていたのだが久坂部先生の本を読んで,認知症患者側からの心情を学んだのと自分の親の姿を見て考えを改めた。今は認知症が重篤になる前に逝きたいと思っている。オカシナ記念病院は久坂部先生がそうありたしと考える高齢者医療の姿だ。実際先生の御父上もこんな自由な死に方をしたとのこと。高齢者や認知症患者に延命を目的とした高度治療はしないという仮想理想病院オカシナ記念病院の理念には一部賛成だ。でも自分はがん検査はするし食事にも気を使って生きてゆくよ。2020/02/22
よつば🍀
130
「赴任」「臨終」「自由」「検診」「青年」「嫌煙」「縮命」「離任」8話収録の連作短編集。主人公は、離島の医療を学びに『岡品記念病院』にやってきた研修医の新実一良。このオカシナ記念病院では患者が求めなければ重症でも治療を施さない。リアルな現実世界では、定期的な検診や人間ドッグの推奨、早期発見の意義などが、これでもかというくらい唱えられているが、それとは真逆とも言える方針がフィクションでありながらメッセージ性を持って伝わって来る。『出来るだけ何もしない医療』『患者の意志を尊重した程良い医療』など常識が覆される。2020/01/20
初美マリン
129
かたぐるしくはないけれど、現代の医療に真っ直ぐ問いかける。もともと延命治療は、望んではいないが、何が正しいのか周囲の自己満足のためか、なんだか来年の人間ドック受診するのを考えてしまう。2021/10/11