内容説明
巣鴨で六代続く糸問屋の嶋屋。店主の徳兵衛は、三十三年の働きに終止符を打ち、還暦を機に隠居生活に入った。人生を双六にたとえれば、隠居は「上がり」のようなもの。だがそのはずが、孫の千代太が隠居家を訪れたことで、予想外に忙しい日々が始まった!千代太が連れてくる数々の「厄介事」に、徳兵衛はてんてこまいの日々を送るが、思いのほか充実している自分を発見する…。果たして「第二の双六」の上がりとは?
著者等紹介
西條奈加[サイジョウナカ]
1964年北海道生まれ。2005年『金春屋ゴメス』で第17回日本ファンタジーノベル大賞を受賞し、デビュー。12年『涅槃の雪』で第18回中山義秀文学賞、15年『まるまるの毬』で第36回吉川英治文学新人賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
210
人生はすごろく。一枚目は家業の繁栄代替わりまで。もう一枚は隠居してから。これは隠居してからの話。商いの成功よりも自分の短い老い先の中でささやかな家族の姿に、何とも豊かな景色が広がる。そんな徳兵衛の気づきを西條奈加さんが平成の終わりに教えてくれた。本当に人生は『上がり』のないすごろくなのだなぁと、この年になると感じる。自分一人で大きくなったわけじゃない。私の前にも後ろにも『道』はあるものね。この孫・千代太の様に私の縁続きの者(血縁とは限らない)がどんな道を歩くのだろうか。そんなことを思った。2019/04/27
ひさか
168
公明新聞2017年6月1日〜2018年5月31日連載のものに加筆修正し、2019年3月角川書店刊。徳兵衛の第二の人生である隠居生活を二つ目のすごろくに例えて語る、江戸人情お仕事ストーリー。少し、ごちゃごちゃした話ではあるが、工夫があって楽しめる。2020/08/09
初美マリン
159
癇癪持ちの隠居の第二の人生を孫の成長と共に描く、上手く行き過ぎかとも思いましたが、とても心地良い読後感です。2019/07/17
とろとろ
151
江戸時代、ある問屋の主人が隠居したことから、その周囲で次々に事件が起こるっていう話。その中で当時の商いの機知が随所に見えて、とても面白かった。この作家さんの場合、最後の数ページで一気に事が好転するというのではなくて、物語の後半から話が徐々に好転していくのが何だかとても嬉しいというのか楽しいというのか読みやすいというのか、読者のツボをおさえ要点をよく掴んでいるような気がする。おかげて一気読みだった。以前に「無暁の鈴」を読んで、やはりこの作家さんの得意分野はこの辺りなのかなと思う。安心して読めた。面白かった。2019/07/24
Makoto Yamamoto
138
徳兵衛が人生の上がりだと思っていた隠居生活が、まさか「第二の双六」の振り出しに。 現役時代はわき目も振らず商売に勤しみ、次世代の息子に任せての隠居。 無趣味だった徳兵衛には他の隠居がすることに興味を持てず、暇を持て余す。 ここに孫がやってきて動き出す。 隠居すごろくの始まりに。。。 展開もよく、面白く読ませてもらった2020/11/15