内容説明
抵抗・屈服・追従、ヒトラーの権力に敗れたメディア界の苦悩。新聞・雑誌からニュース映画・ラジオまで、ナチスの巧妙な支配に屈していった第三帝国のジャーナリズムを追う。
目次
第1章 ヒトラーの「権力掌握」にメディアはどう対応したか
第2章 ナチスのメディア対策はどう進められたか
第3章 デモクラシーの旗手の大新聞はどのように闘ったのか
第4章 ブルジョア・保守派新聞はどのように服従させられたか
第5章 カトリックとプロテスタント―異なった教会系新聞の対応
第6章 婦人雑誌やグラビア新聞はどのように取り込まれていったか
第7章 戦意高揚に利用し尽くされたラジオ放送とニュース映画
第8章 反ユダヤの宣伝道具の党機関紙―『民族の監視者』『黒色軍団』『突撃者』
第9章 ナチ党週刊紙『帝国』は燕尾服を着た宣伝役だったのか
第10章 「行間の抵抗」は果たして読者に伝えることができたのか
第11章 第三帝国のジャーナリスト―八人の群像
第12章 ドイツの言論にゼロ時間はあったのか
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
つちのこ
33
ナチスのプロパガンダ戦略の片棒を担いでしまったジャーナリズムの統制は、ヒトラー独裁国家主義の象徴的な負の遺産である。認識を新たにしたのは、ドイツジャーナリズムの崩壊がナチス台頭以前から起こっていたということ。そこにはナチズムの過小評価による隙があったという。言論の自由を奪われた新聞の廃刊は、多くの有能なジャーナリストを国外に逃亡させ、ある者は収容所で命を絶つ。自由主義の終焉が狂信的な一人の独裁者によって起こされた歴史は、偶然ではなく必然であった。今の世にもそんな国家が存在している事実はあまりにも恐ろしい。2022/02/15
リュウジ
8
★2 やはり人は自己正当化するものか。ナチス台頭は全て当時のジャーナリズムのせいと言わないが、P201「ナチスは我々とは別世界の産物である」と言い放つなど、当時のジャーナリストたちは国民に届かなかったのに「行間の抵抗」を続けた「もう一つのドイツ=ドイツの良心」だったと言いたげ。国民でなくジャーナリストがこれを言うのは違和感。敗北の理由はヒトラーを過小評価し続けたことと横の連携をとれなかったこと。「我が闘争」には新聞を使った大衆操作論があったのにね。ペンは剣ほど強くなかった。戦争を終わらせたのは戦争だった。2022/06/13