出版社内容情報
氷壁初登攀の成功から一転して骨折,墜落,宙づり,パートナーによるザイルの切断という絶望的な状況に陥ったクライマーが,極限状況における人間内部の葛藤と傷ついた肉体との格闘を克明に記した,迫真の山岳記録文学.
内容説明
氷壁初登攀の成功から一転して骨折、墜落、宙づり、パートナーによるザイルの切断という絶望的な状況に陥ったクライマーは、いかにして「死のクレバス」から生還したのか。孤独と不安、パートナーへの猜疑、死への恐怖など、極限状況における人間内部の葛藤と傷ついた肉体との格闘を自ら記した、迫真の山岳ノンフィクション文学。
目次
1 山の湖の下で
2 氷壁に挑む
3 頂きの嵐
4 稜線上の苦闘
5 事故
6 最後の選択
7 氷に刻まれた影
8 沈黙の目撃者
9 遙か遠くで
10 心の中のゲーム
11 非情な大地
12 時間切れ
13 溢れる涙
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヨクト
30
これがノンフィクションだということをまだ飲み込めずにいる。それほどまでに壮絶で奇跡的な内容だった。アンデスの登頂、骨折、パートナーによるザイルの切断、クレバスへの落下、そしてそこからの生還。パートナーはパートナーで、ザイルを切断したことへの罪悪感に苛まれる。複雑骨折し、水も食料もなく、満身創痍の中での単独の歩みは、読んでいるだけでも痛々しく、恐ろしい。ノンフィクション文学として、山岳文学として本当に素晴らしい内容。2015/10/18
アルプスの空♪
19
最高でした~ペルーアンデスの中心峰シラウ・グランデ西壁登攀に挑んだ、サイモンと登山家でありこの本の著者ジョー・シンプソンが絶望と希望を繰り返しやっと生還した奇跡の"山”の小説である。圧巻なのは頂上制覇も束の間、延々と続く下山の件である。読む側はまるで長島スパーランドのホワイトサイクロンに乗っているような臨場感(乗ったことないけど笑 たぶんこんな感じ・・^^;)で恐怖とホワイトアウト!!氷壁とザイルに結ばれた壮大な自然の中に今にも消えそうな2つの命と”生きること!”を身近に感じることが出来ます♪2010/11/26
kawa
17
極限状態で奇跡的にベースキャンプに生還した際の「その瞬間、体のどこ一つ動かせない、弱々しい、ただすすり泣く人間に変わってしまった。私を支え、力の鼓動を伝えてくれた何ものかは、嵐の中に蒸発してしまった。」が凄い 。登山知識が乏しくイメージがいまいち掴めないのが歯痒い。映像化されているという映画にチャレンジしよう。2016/11/20
Satoshi
9
山岳遭難のドキュメントは登山愛好家として、好きなジャンルだが、本作はその中でもベスト。ザイルに繋がれ互いの力量を信頼しあった仲間であっても、片方が絶望的な滑落をした際にはザイルを切るという選択をする場合もある。その際の滑落したジョーとしなかったサイモンの心理描写が生々しく、心を打つ。2020/01/09
タカボー
8
これは名著。もっと古臭いのかな、って思ったけど、全然そんな感じしない。もう生きるとか死ぬとかを超えている。壮絶すぎるけど、読後感はあったかいミルクティーの香りがする。もちろんクレバスに落ちたことなんか無いから、実際と全然違うかもしれないけど、頭の中に景色が確かに浮かんでた。2019/03/19