出版社内容情報
人文・社会・自然科学の諸領域のみならず政治の世界にも絶大な知的影響を及ぼした哲学者が，自らの思想形成の全貌を明らかにする．上巻では，生い立ちから32歳で認識論と科学哲学の画期的名著『探求の論理』を世に問うまでを語る．
内容説明
人文・社会・自然科学の諸領域のみならず政治の世界にも絶大な知的影響を及ぼした哲学者が、自らの思想形成の全貌を明らかにする。上巻では、生まれ育ったウィーンの知的風土、学生生活、職業体験、音楽をめぐる思索、初期の諸研究など、三二歳で認識論と科学哲学の画期的名著『探究の論理』を世に問うまでの知的経験を語る。
目次
全知と誤りおかしやすさ
幼年時代の思い出
初期の諸影響
第一次世界大戦
初期の哲学的問題―無限性
私の最初の哲学的失敗―本質主義の問題
本質主義に関する長い余談―今なお私が現代のほとんどの哲学者と意見を異にしている点
決定的な年―マルクス主義、科学、えせ科学
初期の諸研究
第二の余談―独断的思考と批判的思考、帰納を用いぬ学習〔ほか〕
著者等紹介
ポパー，カール・Ｒ．［ポパー，カールＲ．］［Ｐｏｐｐｅｒ，Ｋａｒｌ Ｒ．］
１９０２‐９４年。ウィーンのユダヤ人家系に生まれる。哲学者。４９‐６９年、ロンドン大学教授。批判的合理主義の立場を打ち出し、科学方法論の領域では「反証可能性」の重視を主張、社会哲学の領域では「漸次的社会工学」の理念を提起した
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感想・レビュー
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ころこ
41
思想と生き方が不可分でない偉大な哲学者を見たことがないので、哲学者自身が半生を書くというのは有意義なことです。生い立ちに、平易（実際はかなり難しく感じました）で簡潔な科学的であり哲学的な問題が要所で差し挿まれている本書を、著者は「知的発展の物語」といっています。仮にこの難しい箇所を読み飛ばしたとしても、抽象的で難解であるはずの哲学者の書いた本を読むという経験をすることが出来ます。殆ど例のないこの試みは、教師であったということが関係している気がします。2021/04/22
長谷川透
22
自然科学、人文科学の両分野に多大なる影響を及ぼしたポパーの自伝。彼を讃える学者があまりにも多いために彼の名前だけは知ってはいたが、そのため反って気構えしてしまい彼の著書を読むのをこれまで躊躇していた。『果てしなき探求』はポパーの知識、そして知的探求への貪欲さを窺い知れると共に、ポパーの知の柔らかさも伝わってくる。簡単で気軽な入門書とまでは言わないが、ポパーが小難しくお固い哲学者ではないことに気付くことができ、入門書ではないが、彼への敷居を下げてくれる良書だと思う。文化資本って本当に重要だとつくづく思う。2013/08/03
白義
6
自然・社会科学両方に甚大な影響を及ぼしたポパーの自伝にして、その哲学全体への本人による最も優れた入門書。マルクス主義との出会いや違和感から反本質主義への目覚め、その反証主義が、彼の人生と共に実にコンパクトに提示されている。華やかな育ちだと思ったけど、音楽他文化、芸術への造詣の深さも驚き。しかもそれへのエッセイ的な文章がそのまま彼の穏健な保守的進歩主義と繋がる辺り、やっぱり上手いなあ。訳もよく読みやすいし、当時の知的風土もわかるのがいい2012/02/07
roughfractus02
2
日付のある出来事を表す単称言明と事象としての純粋存在言明を区別した著者にとって、自伝とは単称言明の連鎖なのだろうか? また歴史主義の単一過程の採用に閉じられた社会への意志を見た著者にとって自伝とは何なのか? 本書が反証主義者の自伝であるかぎり、日付のある単称言明は反証不能であり、ここに採用される歴史時間は力の相互作用から構成される状況の論理として読まれる余地がある。とすれば、自伝を構成する諸要素が著者によって批判されたことを読者が知るなら、本書は著者の人生なる観念で閉じられず、果てしなき探求となるはずだ。2017/02/23
ダージリン
0
知的に生きるとはどういうことかについて考えさせられる。 時代や出会う人びとにも大きく依存する気がする。ポパーはそう言う意味では恵まれていたのではないか。2011/12/17
